そして残りの人生。何をしようかと考えてた矢先に、一通の手紙が僕に届いた。
『来い。お前が必要だ。 ゲンドウ』
その一通の手紙の内容を信じて、僕は父さんの住む、第三新東京市へ訪れた。
生きる、目的
by.SNAKE
第一話【見知らぬ、人物】
ガタン、ガタン...ガタン、ガタン...
...父さん、か。
第三新東京市へ向かう電車。
その中に、人よりちょっとだけ不幸な少年が居た。
その不幸な少年こそ、先ほどの手紙を受け取った少年、碇シンジ。
モノレールの中には、シンジを含め、十数人の人が乗っていたが、第三新東京に向かうほど、どんどんと人が少なくなっていく。
とうとう、同じ車輌にはシンジと一人。
ふと、シンジは向かいを見る。
しかし、何故か、シンジからは相手の顔は見えない。
逆光か、それともそれとは違うものか。
...?
さっきからシンジの向かいに座っていた様だが、記憶を手繰り寄せてみても、その者の顔は分からない。
すると、いきなり相手が立ち上がり、こちらへ向かってくる。
シンジは逃げ出したい衝動に駆られたが、体がピクリとも動かない。
スペースはたかが電車。2,3歩で向こう側の席だ。
相手はあっという間に目の前に居る。
その目の前に立っている者は、ピストルを指で表し、シンジの額にむける。
「...BANG!」
一瞬、周りがホワイトアウトしたかと思うと、次の瞬間には。
「ここは何処だろう?」
先程とは違う、夕暮れの電車に座っていた。
他に人が居る気配は無い。
窓はオレンジ色の光が差し込み、その向こうは見えない。
規則正しく揺れる吊り革に、レールの継ぎ目で揺れる座席。
左右を見回し、正面を見ると、シンジと同じ、中学生位の少年が座っている。
だが、またしても、シンジにその顔は見えない。
「誰?」
「俺は...だよ」
シンジには名前の部分だけノイズがかかった様に聞こえない。
「えっ?何?」
シンジは少年に聞き返す。
「...まだ聞こえねぇのか?」
少年は酷く残念そうな声を上げる。
「?何を言ってるの?」
シンジには意味が分からない。
「俺が何度声を枯らしても、お前にはまだ届かないんだな...」
「...?」
「だが今まで、お前はココに来れなかった。それだけで良いとするか...きっかけは病気か?」
「...何でその事を?」
「いずれ分かる。...じゃぁな...」
景色が遠ざかっていく、そして周りはまたもホワイトアウト。
次に、シンジが目を開けた時には。
―第三新東京市です。お荷物を忘れないようにお気を付けください...
「...夢...だったのかな?」
そう呟いて、シンジは第三新東京市に降り立った。
「どうしようかな...」
シンジは時間通りに着いたのだが、案の定と言うべきか?
その迎えに来るはずの妙齢の美女が遅れているのだ。
シンジが途方にくれ、道に座って迎えを待っていると、映画でしか聞いた事が無いような爆音が、迫ってくる。
「何だろ...?」
爆音がする方向にシンジが目を向けて見ると、山の向こうから十数機の戦闘機と共に、巨大な黒い生物が現れた。
「...何あれ?」
普通の少年ならパニックになる事は必至だが、この少年は少しも動じず、他人事の様にその生物、使徒を見詰めていた。
数発のミサイルが地上擦れ擦れをかすめながら、使徒へと吸い込まれていく。
しかし、使徒は全くの無傷。むしろそのお陰で戦闘機が一機、右手から放たれたパイルに貫かれ、撃破されてしまう。
その墜落した機体の行き先は?
お約束、シンジの真上だ。
「...あっ、落ちてきた」
少年はその落ちてくる戦闘機を他人事のように見詰めている。
...ここまで、か...結構早く終わっちゃったな...
シンジは覚悟...いや、そんな物では無いが死を恐れずに、死を受け入れようとした。
その時。
突然、体を掴まれる様な感覚を感じ、次の瞬間には、近くに建っていたビルの屋上に居た。
「あれ?」
突然の出来事にさすがに戸惑うシンジ。
...僕は戦闘機に潰されたハズじゃ?
シンジは依然戸惑うが、少し冷静になると、自分の体勢がおかしい事に気づく。
どうやら、シンジは誰かに胴を掴まれ、脇に抱えられているらしい。
シンジは抜け出そうとするがビクともしない。
声を出そうとするが、この者から滲み出る雰囲気。オーラとでも言おうか?
それが、シンジに声を出す事を戸惑わせていた。
「おーおー、サキエルの奴派手にやってくれおって...」
その者は使徒を見詰め、独り言の様に呟く。
「は、離してよ!!」
シンジはありったけの精神力をつぎ込んで、声を出した。
「ん?あーあースマン。離すの忘れててん」
ふとシンジを掴んでいた感覚から開放される。
直ぐに走り出そうとするが、ココはビルの上。しかも安全対策のフェンスの向こう側。下手に動けば落ちてしまう
「君、誰?」
さっきまで自分をつかんでいた者。
別に変な所は無い。見た限り、年齢は二十代後半辺りの青年だ。
上はタンクトップに下はカーゴパンツという姿。不思議なところは別に無い...が。
シンジは何かに縛り付けられたように相手の目から視線を外せない。
相手の、その、目。
金色に輝く、全てを吸い込むような深い目。
「ん?自分か?自分は...んーまぁ、『エノク』言うもんや。よろしゅう」
「エノク?」
「まぁ、深く気にせんといてくれ。...しっかし、弱い心やのぉ?『パンドラ』?」
「パンドラ?それって、僕の事?」
「あぁ、そうや。ワイ等ん中ではお前はそう呼ばれとる。なんであそこで諦めよった?」
「...僕はいつ死のうと同じだから。どうせ一年後には死んでるんだから、ちょっと早まったかな?くらいの感覚なんだ」
シンジは一瞬悲しそうな顔をしたが、直ぐにいつもの表情に戻る。
普通の人なら同情、哀れみの目を向けるかもしれない。だが。
「っかぁぁぁぁぁぁ!情けないやっちゃなぁ!!余命が一年?それがどないしたっちゅうねん!後一年で死ぬ言うんならそれまで精一杯生きてみぃ!!」
エノクは違った。
「...そんな事言ったって...あと一年で死ぬ気持ちなんか...僕の気持ちなんか誰にも分からないじゃないか!」
「ケツの青いがガキばっかりがそんな事言いよる。ならお前は他人の気持ちがわかんのか?」
「!...」
シンジは何も言い返せなかった。
「まぁ、ワイが何言ってもしゃあない。答えは自分で見つけ出すもんや。」
「...」
シンジはまだ黙ったままだ。
「...今回は助けたったけど、次は助けへんで?ほな」
次の瞬間、エノクが消えたかと思うと、シンジもビルの下に消えていた。
「...何だったんだろう...?」
シンジがいきなりの出来事に戸惑っていると、向こうから青い物体が猛スピードで向かってくる。
それを凝視してみると...車だ。ルノーアルピーヌA310。そう、彼女の愛車だ。
「ん...?青い車...?」
一瞬にして、距離は縮まってくる。後10m...5m...2m。
「う、うわぁ!?」
ギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!!
豪快なブレーキ音を立てドリフトし、車はシンジの目の前に停まった。
車との間は約10数cm、そんな所だろう。そのすれすれに停まる技術を持っている者で青いルノーと言えば...
「碇シンジ君ね!?早く乗って!」
葛城ミサト。彼女しか居るまい。
「えっ?あ、はい!」
シンジにとって、過酷な人生が始まったのは、余命宣告された時ではない。この時だった。
+続く+
後書き。
SNAKE「はい、やってしまいました。自分のところの書いても無い僕の投稿。(汗)」
シンジ「大丈夫なんですか?」
SNAKE「おぉ!まだシンジ君だけだね。後々怖い人たちが出てくるから...」
シンジ「もう居ますよ?」
SNAKE「...?ど、どうしてまだ出てないのにいるの?」(汗たら〜)
レイ「...なんで碇君の余命が一年なの?(怒)」
SNAKE「それは後々...あっ、ATフィールドはやめて!まだ使えないはずでしょうが!?」
レイ「私は後書きようレイだもの。だからこんな事もできるわ」
SNAKE「あぁ!ディラックの海!やめて!これLRSだから!」
レイ「LRS...?そんなの当たり前。ハッピーエンドじゃないとダメなの」
SNAKE「うわぁ!吸い込まれる!エンドは一応、悲恋verとハッピーverを考えて...あ...る」
シンジ「何も吸い込まなくても...(汗)あ、這い出てきた。」
SNAKE「ココノさん、皆さん、出てこられたら...また...お会いしましょ...う...」
シンジ「合掌。(汗)」
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