幼少時から続いていることだが、繰り返し見る夢がある。いつか叶えるべき未来への誓いではなく、睡眠中に連れ去られる架空世界のことだ。しかし、夜毎同じ夢を見ているはずなのだ。それには確信がある。だが、目覚めと共に夢は形骸になり、砂のように零れ落ちていく。
 オレンジ色の海からは微かな血臭が、潮風と共に運ばれてくる。爆撃の痕跡だろうか、瓦礫の山々は月明かりに照らされていた。絶望の淵に立たされているのだが、もはや指先を微かに動かすことすら出来ない。
 ふいに足音が聞こえる。最初は空耳だろうと無視していたが、徐々に近付いてくる足音は、僕の背後でぴたりと止んだ。恐る恐る振り返ると、そこには……。
 蒼銀の髪が、揺れる。

 ガバリと起き上がると、シンジは額にかいた汗を拭いた。息も荒く、まるで100mを全力で走った後のようだ。いつものように気を落ち着けていると、隣に寝ていた少女が眼を擦り、シンジの方へ顔を向けた。
 「シンジ、大丈夫?」
 少女はシンジの背を摩り、心配そうに眼を覗き込む。
 「大丈夫…、いつもと同じだよ」
 「またあの夢?」
 「…うん。もう少しで、何かを手に入れられそうな気がしたんだ。ごめんね…起こしちゃって」
 シンジはすまなそうに少女に苦笑した。
 「いいのよ。でも、次は私の夢を見てくれると嬉しいな〜」
 少女は落ち着いたシンジを布団の中に引っ張り込もうとする。良い香りが、シンジの鼻腔をくすぐった。少し興奮して来たが、明日の朝は早い。シンジは唇にキスをするだけで諦め、少女の華奢な身体を抱いた。
 「おやすみ、シンジ」
 「おやすみ、マナ」
 



+続く+






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