シンジ君と、もう一月以上は会っていない…

電話ぐらいはしているけど、元作戦指令室とかとはブロックが違うから…軟禁されている気分だわ。
シンジ君は今頃どうしているのかしら、電話だけじゃ足りないわ…
会いたい。

会いたい…会いたい…会いたい…

ようやく訓練も終わって休憩、電話の時間。
携帯が使えないから、一々外部と繋ぐ段取りを踏まなきゃいけないのがまどろっこしい。

「…シンジ君!」
〈レイ!良かった…今日も無事に終わったんだね?〉
「うん…あなたとまた会えるまで、後もう少し。絶対無事に帰るから!!」
〈大丈夫さ、レイなら!あ、そうそう、街じゃクリスマスに向けてもう飾り付けしてるんだよ…気が早いよね、まだ11月なのにさ。〉
「フフ、あなた今年は幼稚園と保育園を回るんでしょ?頑張ってね、サンタさん♪」
〈あはは…そう言われたら頑張らなくちゃね!〉

「…あ、時間だわ…戻って休まなきゃ…」
〈あ、そっか…全く!僕ら世界を救ったっていうのに、相変わらず皆と同じ扱いなんて。僕らが会うぐらいバチは当たんないじゃないか…〉
「…確かにそうだけど、私以外にも家族と離れてここ居る人も居るわ…我慢しなきゃ。」
〈うん…わかってるさ。それじゃ、また明日…愛してる、レイ〉
「私も、愛してるわ…シンジ君…」
電話を切った後で何時も思う、彼の…シンジ君の声がそこに残っている気がして、受話器をなかなか戻せない。

「…私は、随分と弱くなってしまったのね。」
誰も返事はしない…受話器すら、ただ切れた合図に音を漏らす事しか出来ない。
割り振られた部屋に戻り、私はベッドで身を縮めた…





あなたと居る未来まで
    レイ猫。 ◆/75iL116..





番外、“his side”

もう、一月以上だ…レイの声だけと対面するのは。

今日もいつも通りの時間に電話が来た、そしていつもの様にその時間は終る。
不思議と僕らには話題が尽きる事は無かった、それはラッキーだった…
何とか会える様にと、この間もネルフの人に掛け合ったけど…機密上、規則上の理由とあしらわれてしまった。

…僕らは、一体何時まで誰かの為に我慢しなきゃいけないんだろう?
確かにこれは彼女…レイの望みでもある。でも、僕らが会えなくなる事は分からなかった…
レイに、会いたい。

レイの部屋にはまだ微かに彼女の香りが残る…掃除する度に、埃と一緒にその微かな物も消えて行く様で悲しい。

カレンダーは、もうすぐ12月になる。
レイが帰るのは丁度年末、年内にはギリギリで間に合うスケジュールだ。

…新しい年を迎える瞬間、僕の隣りには彼女は居るんだろうか?
…何を考えてる僕は!?
クソッ、嫌な事ばっかり頭を掠めてく…ごめん、レイ。
きっと君もこの気持ちと戦ってるんだ、声を聞けば電話でだって分かるよ…僕は強くならなきゃ。

彼女の帰って来た時に、笑顔で出迎えてあげたいんだ…


**********


私達そんな事を繰り返して、ついに2ヶ月が経った。

今日は打ち上げ基地へと移動する…実は移動は午後から!
シンジ君に会う為、驚く顔を見る為、家へとこっそり侵入した…
電気も点いていない朝方、シンジ君の部屋、シンジ君の匂い…はしたないわ私、興奮してきた…

居た、まだ寝てる。
ゆっくり近付いて、顔を覗き込む…可愛い寝顔、今すぐにキスしたい。
でも、まずは驚かせるの…
それが楽しみだったのだし。

…フフ、昨日はよっぽど疲れて寝たのかしら?私がベッドに潜り込んでもまだ起きない。

「…シンジ君。」
…体をくねらすけど、まだ起きない。
「シーンージー君?」
…鼻がピーピー鳴ってる、間が抜けてるけど可愛いわ。
「…もぅ。起きて、シンジ君。」

…しょうがないわね、特別にキスで起こしてあげよう。
首に手を回し、舌で唇を濡らしてキスしてみた…
ど、どういう事!?全く反応しない!むぅ、それなら舌入れちゃうから…

シンジ君の唇の奥に私の舌が吸い込まれてく。
「ん…んん?…ん゙ッ!?」
案の定驚いたシンジ君を、そのまま抱き締めて喋らせなかった…
言葉や声より、あなたを感じたい…会えなかった分を取り戻すわ。

シンジ君も、分かってくれた…いや。
やっぱり私達は同じなのね、だからきっとこうして…ここに居るのね。



で、それからの一週間は瞬く間だったわ。
会えない時間も問題じゃない、二度と会えない訳じゃ無いのだから…

記者会見や取材が来て、色々と話して…少し疲れながらもシートに体を固定する。
一緒に乗った飛行士の威勢の良い声、英語で「神様に祈っておけ、臆するのは宇宙に出てからで遅くない」と激を飛ばす。
恐れなんて無いわ、私は帰るもの…シンジ君の居るこの地球に。

打ち上げの負荷はエヴァの発進よりは重かったけど、問題無い。
じきに通信が入り、無事に宇宙へ出れたのだと分かった…家からネルフに行くまでの電車より、よっぽど早いのね。

…地球は、すごく綺麗だった。
深い青の宝石を、緑と土の装飾が縁取っているみたいで…所々かかる白い雲は、地球の放つ光の残像…といった所ね。
写真、シンジ君に持って帰れないかしら?

…無重力に身を任せて、私は不思議な感覚に陥る。
乗組員の一人は、宇宙酔いと呼ばれるものにかかって横になってしまったけど…私のは不快感じゃない、昔何処かで出会った感触。
…セントラルドグマ?

思えば、私も随分と不思議な毎日の中に居たのよね…
心の壁、使徒、エヴァ…そして私自身。

もう二度と戻らないあの日々は、私達に何を残したのかしら?
特別取り戻す気も無いけど、懐かしむ私は何故かまだ息づいている。



宇宙服を着て、単身外の世界へ。

…水よりも抵抗の無い感触、澄んだ場所よりも見通しが良くて…それでいて濃霧の中に居る様に何も分からない、不思議な空間…
自分の心臓の音と、微かに聞こえる服の中を循環する液体の音以外は何もない。
乗組員の何人かは、恐怖と好奇心が交差するとか言ってたけど…私は、特にそういった気はなかった。
ただありのまま掴める様でまるで掴めない場所、不思議な場所だとしか感じなかった。

地上では一ヶ月経つ頃になって、私達は地球へと帰る…そこで、狙った様な事が。
中規模のスペースデブリが、進路上に出てきたらしい…当たるとまずい、避けれるかは運次第らしい。

…私を脅かすもの、私達の幸せを脅かすもの…嫌よ、邪魔はさせないわ。
乗組員が固唾を飲む中、私は静かに壁をイメージした。
…ATフィールド、まだ使えるのかしら?




…無事に帰って来た。
スペースデブリは当たらず、ランディングも成功。
シャトルを降りると人だかりとフラッシュに見舞われる…シンジ君、シンジ君は何処?

…居た!!

私はようやく彼を見つけた、彼も私を見つけた…
もう離れて居たくない、望む事はあなたと居る事。

今、走り出す

あなたと居る未来まで




おしまい。







エピローグ

帰って来て新年を迎えて、私達がゆったりと寝正月も過ごせず皆が押し寄せる…

「…あなた達に、こんな権限があるのかしら?」
「何言ってんのよレイ?幸せもコイツもあんたの独り占めなんて許すもんですか!!ほ〜らシンジちゃんあ〜ん♪」
「あ、アスカ…まだ僕の事を…」
「ぶわぁ〜か!あんた究極のスットコドッコイね、アタシはレイを悔しがらせたいだけよ!恋人も居るしね〜♪」
「あら、そうなの?」
「ホントぉ!?ちょっち写真見せなさいよぉ!!」
「ミサトは加持さんとイチャイチャしてりゃいいでしょ!?ダーメ、トップシークレットよ。」
「…あら、また随分と可愛い子じゃない。シンジ君より全然格好良いじゃない?」
「リツコさんだめぇ〜ッ!!」
「おぉ、ワイにも見してなぁ!」
「騒々しいな…」
「あぁ、だが問題無い。」
軽く10人以上の来客に、この騒ぎ…近所に怒られる前に止めようと立ち上がったその時、目眩がした。
「あれ…レイ!?だ、大丈夫!?」
「…大丈夫よ、ちょっと気持ち悪いけど。」

…その後数日気持ち悪さが残ってたので、シンジ君の付き添いで病院に行ったら

「おめでとうございます、妊娠してますよ。」

「えっ?」
…妊娠?
「えぇっ!?」
「えぇ、妊娠。一ヶ月ちょっとですが、もうバッチリ反応でてますよ。」

い、一ヶ月…ハッ。
シンジ君に久し振りに会った、あの日かしら…
外で待つシンジ君は、どんな顔するのかしらね…




あなたと居る未来まで―ほんとの終劇。







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