5日後、ようやく病院…もといネルフを後にした私達。

…の家に、帰って早々の来客。
私がドアを開けると、小脇に何か抱えたアスカが上機嫌で入って来た。
「はろー、はろー!早速だけど赤ちゃん見に来たわよ〜…ゲッ、何これ!?廊下がミサト居た時みたいじゃない…」
「…全部見舞いと出産祝いよ、帰りに少し持って帰らない?」
「あんたねぇ、アタシに帰りも荷物持たせる気?それより早く見せてよ、その為に来たんだから。」

ベビーベッドを覗き込む私とアスカ…
「…アンタと似てるわね。白いし、目赤いし。」
「でも、口元と鼻はシンジ君似でしょ?」
「ま、どっちに似ても美人でしょうね…にしても人形みたい、この色づかいだと。」
…その久々の言葉に反応して睨むと、アスカは動じずに続ける。
「やーねぇ、エキゾチックって事よ!将来は男引っ掛け倒す罪な女になるわねー。アハハ♪」
…素直に喜ぶべき、なのかしら?この場合。

「ん、そういやこの子名前は?」
「アスカはまだ知らなかったわね、この子は」
「ただいま〜!あ、アスカ。」
「おかえりシンジ君、それじゃ私ご飯の用意するわ。」
「…あんた絶妙なとこで帰って来たわね。で、この子名前は?」
改めて聞き直すアスカに、今度はシンジ君が答え…トゥルルルル
「あ、電話。ちょっと待ってて。」

ご飯の用意も出来たのでアスカも一緒にお昼を…え、まだ名前聞けてないの?
「呪われてんのかしら、アタシ…ねぇ名前って」
ピンポーンピポンピポンピポンピポンピンポーン
…けたたましく鳴るチャイムがアスカの言葉を遮る。

うなだれて俯せるアスカ…大部ヘコんでる様子。
「司令かしら…ちなみに名前は「マイ」よ。」





Aurora Tour
    レイ猫。 ◆/75iL116..





レイが玄関に行った時に、アスカがようやく顔を上げた。

「マイちゃんかぁ…アンタ自分の名前から一字入れたりとかしそうなタイプだのにね?」
「そんな事無いさ。女の子の名前だしユイ、レイ、マイって響きも良いでしょ?」
レイも気に入ってくれたし。
「ま、アンタにしちゃ上出来よね…あの子も名前も。」
そこにレイが戻って来た…
「荷物だったわ、また司令からの。」
ここんとこ毎日何個か届くからリビングの一角や居間はおろか、ついには廊下にまで並べなきゃならない…こんだけあると災害あっても平気かな?なんて。

「アンタ達いい加減引っ越したら?子供できたしこれから物も絶対増えるわよ。」
「うん、考えてはいるんだよ…ただ、も少しだけここが良いかなって。」「病院もネルフもさほど遠くないし、何より住み慣れてるから…」
食事もそこそこ、レイが席を立つ。
「ふーん。ま、あのデレデレ司令様がなんとかやっちゃうんでしょうけどね…レイ、何してんの?」
「赤ちゃんのミルクよ、私何故だかおっぱい出ないの…張ってはいるんだけど。」
ん?アスカがゆっくり席を立って…!?

「ぁっ…!?な、何するのアスカっ…んっ…」
「何って、おっぱい出る様に協力してんのよ?友達も揉んだら出るって言ってたし。」
って急におっぱい…
違う!おっ始めなくても…
「だ、だからって今やるなよ!?」
「あー、アンタやるの?そうね…旦那様のお手並み拝見しましょっか♪」
と、レイの手を止めさせて僕の前に座らせる…
確かに少し大きくなったみたい、こう、エプロンの影の付き方が…
「あんまりまじまじと見ないで…恥ずかしいじゃない。」
「あっ!うー、ごめん。えーと、どうすりゃ良いの?」
「たしか補助器具みたいのあったハズだけど…いや、アンタら今やんの?」
「う…そっ、そうか。」
「えっ!?やだ…」

…さすがにアスカの目の前でそうするのは、お互い気マズいよね。



例の一件から何日と経たずに母乳が出る様になった。
…その、シンジ君の協力もあって。

いちいち煮沸させたりするのは面倒だったし、以後は授乳で間に合うかな…と思ってたんだけど。
「あらなぁに?…そう、お腹空いたのね?ちょっと待ってね〜♪」
ブラをしてると面倒だけど、胸の形が崩れるのが嫌なので毎回手間取る…
「はい、たくさん飲みなさい…」
赤ちゃんって、おっぱい飲む時もジッと私の目を見てるのね…
口を忙しなく動かしながらも、上目遣いにこちらをクリっとした両の目に捉えて離さない。
「私はいつもあなたを見てるわ…だから、安心して飲みなさい?」
…習性としてそうする事を知っていても、どうしても呼び掛けてしまう。

と、私は目の端にシンジ君を捉える。
「…何してるの?シンジ君。」
「んー、ん?あぁ、一生懸命飲んでるな…って。」
「そうね…そういえばこの子、左ばっかり吸うの。好き嫌いあるのかしら?」
「いやぁ…僕は赤ちゃんじゃないから分かんないよ。」
「フフ…それもそうね。」

会話が止まってからも、シンジ君はそこで立ち尽くして居た。
「…側に来たら?ずっと立ってても疲れるわ。」
「えっ!?あぁ、いや…好きで立ってるから、平気…それに、ここでこうして見てたいなって。」
「どうして?」
…シンジ君は、少し黙ってしまう。

「…その、僕も母さんにこうして抱かれてたのかな?って。」
「…」
母親の影を、見ていたのね。

「やっぱり、こっちに来て?これはお願いよ。」
「う、うん…」
私と、シンジ君と、マイと…居間でひとかたまり。
いつの間に寝てしまったマイ、そしてシンジ君。
私も、シンジ君に寄り掛かって少し眠る事にした。



「シンジ君、その包み…何?」

ご飯の支度をしようとリビングに来た時、居間から出てきたシンジ君と鉢合わせる。
「え、あぁ…クレヨンとかだよ。そう、マイが使うかなって…貰った。」
「そうなの…でも、まだ生まれてちょっとなんだから早過ぎない?」
「あ、そうか〜。そうだよね…明日幼稚園に返してこよう!」
と、シンジ君はそそくさと包みを振りながら自分の部屋に戻ってしまった。
…何か、不自然よね?

その日の夜、ようやく寝付いたマイの側をそっと離れて水を飲みにリビングに…あら?
居間から微かに光が漏れている。
「…シンジ君?」
呼んでも返事は無い…
興味が湧いたので、リビングをゆっくり覗き見ると…

や、やだ!ビデオ見ながら…そんな、何してるのよシンジ君!?
画面いっぱいの肌色と、傍らにはティッシュケース…私に最近くっついてこないのは、このせいなの!?
戸を全開にしても一向に気付かないシンジ君…そのまま私は後ろに仁王立ち。
(へぇ…髪長い娘が好きなのかしら?それに、コスプレ?)
思わずまじまじ見てしまうけど、他人の行為なんて興味無いから!!
…姿勢を低くして手を回し、その両手を一気に持ち上げる!
「ふっ…あふぁっ!?れぇっ、レイッ!!!」
「あなたにこんな趣味があったの、初めて知ったわ…」
「うぅっ…いやっ、ちがっ…浮気じゃないだろ!?」
「…何を焦ってるのよ。」
みるみる萎れるシンジ君…あらあら、さっきまでの元気は?

「どうしようかしら…許して欲しいの?」
手を上に掴まれたまま頷くシンジ君。

「こういう事して反省してるの?それともするのを許して欲しいの?」
…だんだん耳が赤くなって来た、ついでに興奮もしてるらしい。
「…ダメよ、許さないわ。私はマイの事一生懸命見てるのに、あなただけこうしてるなんて。」
手を開放して、私はシンジ君の後ろから手を回す…
「ウフフ…叱られてるのに興奮してるなんて、反省して無いのかしら?」
「そっ、そうじゃないよ…レイが、レイのがっ…」
脇腹の辺りから胸に、お腹にとじっくり撫で回す…
「反省してるの?」
「してますっ!!…してるから、焦らさないでよ…っ!!」
2週間そこら一緒に寝てないだけで、こんなに敏感になっちゃうものなの?
まぁ…私もマイばっかりかまってたから、いけないのよね。
「…どこからが良いの、シンジ君?」
耳元に柔らかく囁くと、シンジ君の身体が小さく跳ねた。

(クスクス…可愛い所は、ずっと変わらないわね)
「あの…僕の、触って…」
「…こんな風に?」
「ちっ、違うよぉ…ぅっ…もっと、もっと上の」

ア゙ァーッ…
「…マイ、泣いているわ。」
「ぅ…え、ホントだ…」
「シンジ君ごめんね、すぐ戻るから。」
「ぁうっ…えっ!?レイ!?」
台所で手を洗って、すぐさまマイの所へ…
「ほら、泣かないでー?お母さんはここに居るわよ〜?」
泣きじゃくるマイを抱っこして、上下に揺らしながら頑張ってあやした。

「ごめんねシンジ君、お…」
しばらくして戻ったけど、シンジ君はもう居間には居なかった…部屋を見ると、頭まで布団を被ってる。
本当にごめんなさい、今度はちゃんとしてあげるから…ね?


『ヒゲでジョリジョリ』
それは相手に男臭さ(臭気ジャナイヨ)、親父臭さ(臭(ry)を印象づける行為。
一般女性、女子らにはあまり好まれたモノではない━━━━━━━━

「お父様、マイにヒゲを当てないで下さい。」
「何故だ、マイは嫌がった事は無い。」
「…汚いですし、遠慮して下さい。」

司令が固まる。

「…お父様?」
と、声を掛けた瞬間から司令は何処かへ消えてしまった…

「父さん、まだネルフにも戻って来ないそうだよ。」
「…相当に効いた様ね、3日間は顔見てないから。」
「レイ、少しは心配してあげなよ…父さんちょっと可哀相だよ?」
「でも、考えてみて?髭には皮脂やその他雑菌が付着している事がありうるし、マイのデリケートな肌がヒゲでキズ付けられたりしたら…」
シンジ君は反論する言葉を失ったみたい、今でこそあなただって父親ですものね。
「僕もやってみたかったんだけどなぁ、そうかぁ。」
親子そろって考えは似るのね、全く…





ネルフ司令、謎の失踪から4日目…本部内で冬月により発見される。

「…碇?碇なのか!?ぉ、おい!何処へ行くんだ!!」
「問題ない、すぐに戻る。」

ピンポーン
「はーい、どちら様ですか?」
シンジ君が玄関に向かってくれた…と、何やらすぐさま私の所にやって来た。
「と、父さんだった…」「っ!?もう戻って来てしまったのね…」
「違うよ、ただ戻って来たワケじゃないんだ!父さんは…」
「邪魔するぞ。」
ど、どうして開けてもないのに入って来てるの?
「…まさか合鍵、完成していたの!?」
時すでに遅しと気配は近付く、私はマイを包む様抱き抱え守りの体制に…襖が開き、司令が現われた。

「あっ!?」
「久し振りだな、レイ。」
…不敵に笑う司令の顔にはヒゲのひの字もなかった、つるつるになってる。
「脱毛では無いが、集中エステにより私は変わったのだ…マイを抱かせてくれ。」
私もシンジ君も呆気にとられ、私の腕からマイが壊れ物のごとく抱き上げられた。
「ほーら、つるつるだぞ〜。じいちゃんのお顔はつるつるだぞ〜…」
後ろを向いて私達に顔は見せない様にしつつも、きっと満面の笑みなのでしょうね…

私達は目頭を押さえる…司令の孫バカっぷりに、感服するわ。



番外 “MAYAのブログ”

☆帰って来た司令?
司令が姿を消して5日目…センパイ、日に日に語気が荒くなってます。
私達にとばっちりが来るんだから、碇司令もさっさと帰って来るべきと思う。

…って、廊下で今すれ違ったの司令!?
ひ、ヒゲが無かった!?
あわわ…せ、センパイ!!大変です司令がっ!!

☆センパイ、暴走。
ヒゲの無い司令を見て、センパイがしばらく壊れてた…計算は間違えるし、コーヒーミルクだけ飲んでたり。orz センパイ…
みんなの提案で私が家まで送ったのはラッキーだった♪
で、センパイの家に着いた時晩酌に誘われちゃった!
センパイってお酒に弱いらしい、少し呑むだけで私に寄り掛かって来たりして…ついさっき、唇を奪われてしまった。
センパイに汚され…染められるなら、本望かなぁ…?エヘヘ

☆本当に帰って来た司令
そんなこんなでヒゲ無し司令を見てから1週間経ち「センパイがこのまま壊れっ放しだったら良いのに…」
と、ちょっとだけ不謹慎な考えが過ぎった日の朝。

…元通りの司令。
えっ?
え゙えぇっ!?

こんな事って…いや、1週間でどうやってあんなにキッチリ生えるの!?
ふ、不潔よぉ〜ッ!!(←自分でも意味不明)

☆夢に出た…
私が倒れている司令に声をかけると、こちらを向いた顔からニョキニョキ生えるヒゲ…キャーッ!?
恐くてその場から逃げたら、青葉さんと日向さんの後ろ姿が見えたから「助けて!!」って走り寄ったの…
そしたら二人まで振り返った瞬間もしゃもしゃ〜って!!
センパイの部屋に逃げ込んで事情を話したら、
「怖い思いをしたわね、マヤ…ほら、こっちに来なさい?私の膝に…」
その言葉が嬉しくて、お言葉に甘えてちょこっと座ったの。
チクッ
痛っ!?…ひっ、ひぃぃっ!!
センパイの脚にもっ!?…かっ、顔にもヒゲェッ!!
いつの間に居たレイちゃんもシンジ君も毛の塊を抱いてもじゃもじゃ顔で笑ってるし、葛城さんもアスカもペンペンも皆…みんな…

で、目が覚めたの。
このせいで寝起きに顔洗う時に、たまーに鏡を見るのが恐い…

イカリシレイノ、バーカッ!!

━━━━━━━━━━このブログがうpされてしばらく、マヤさんに気付かれない様近付いて「もじゃっ!!」と叫ぶのがネルフで流行る。




+続く+



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