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Wounded Mass - ss:12

決別の始まり

 三人の熱気は窓を曇らせた。
 そこはアスカの部屋で、一糸まとわない姿の三人は抱き合い、互いを求め合い、愛を交わして
いた。
 レイは寝台の上にあおむけに横たわり、背中からアスカを抱きとめて両手でアスカの胸を
包み込んでいた。
 アスカの胸はもういっぱいに膨らんで固くなっていた。乳輪が大きくなり盛り上がり、
その中心で乳頭がびくびくと震えていた。全身が赤く上気して青い血管があちこちで浮き上がり、
両方の胸は活火山が青い溶岩を流す筋を残した裾野の中から高くつきだしていた。
 レイは指の間でそのとがった乳頭をはさみ、しごくようにもみ上げて攻めたてた。そして自分の
両胸を潰れるほどアスカの背中に押しつけて、上体をまわしたり揺さぶって刺激を加えた。
 アスカはさらにシンジを迎え入れ、両手をシンジの背中から肩にまわし、強く引きつけて
抱いていた。そして激しく腰を振り、シンジとレイの両方を同時に興奮させた。
 シンジはふたりを押しつぶさないように上体を浮かせた姿勢で両腕でふたりの膝をまとめて
持ち上げていた。シンジは今はアスカに身体を埋めていたが、ほんの数秒前まではそのままの
姿勢でレイと結ばれていた。何度かの短い前後運動でレイが軽く達するとすぐにアスカに
シンジ自身を移したのだった。
 それはもう何度もくり返し続けられていて、二人は交互に声をあげていた。
 「あ、あーっシンジ、シンジ、そこっいいっ」
 今はアスカの番だった。アスカは両方の胸をレイに刺激されてますます敏感になっていた。
両方の胸はがちがちに固まってどこをさわってもアスカが飛び上がるほど敏感になっていた。
アスカの全身からしたたる汗がレイをますます濡らした。
 レイは目の前にあったアスカの耳たぶに口をつけると軽く噛んだ。唇にアスカの耳のやわらかく
てあたたかい感触が伝わり、レイはおもわずアスカの耳たぶを噛みちぎりたくなる衝動を必死で
おさえた。そして、上下の歯でおさえこんだアスカの耳たぶを舌でつつき、ねぶりあげた。
 「ふぅぅぅぅっ」アスカがたまらず大きなため息をついた。そして、シンジに巻きつけた両腕に
一層力を入れ、自らの身体をほんの少し持ち上げると、乱暴に左右にゆすってレイの胸を刺激した。
 「はあうっ」レイはアスカの耳を噛んだまま歯の間から声を漏らした。今まで押さえつけられて
いた両方の胸が少しだけ解放されて、陥没していた乳輪と乳頭が勢いよく飛び出した。その胸で
アスカの背中をこすり上げるとまた全身に衝撃の波が走った。「ああっ、ああっ」レイはたまらず
声をあげた。
 シンジは大きく腰を引くと、そのままアスカから退き、レイとアスカの局部が上下に並んでいる
間に自分自身をねじ込んだ。
 レイの一番敏感な部分がシンジに刺激されてレイは悲鳴を上げた。「あっ、あっあっあっあーー
ーっ」
 アスカも尻の間にはいったシンジの刺激が新鮮だった。「シンジっ、シンジつ」
 それからシンジはさらに退いてレイに没入した。「あ、綾波っ」
 「碇君っ」
 レイは両手に力を入れた。アスカの胸がレイの手をはじくようにゆれた。レイは逃がさなかった。
そして両方の腕をアスカのわき腹にこすりつけ、そこからも快感の波を汲み上げた。腋の下を
くすぐられるような感情がレイだけでなくアスカにも伝染した。
 アスカはシンジの手をふりほどくと、両足をシンジの背中に高々と上げ、シンジの尻の上で
交差させて自分の下腹に引き寄せた。そして全身を上下に激しくゆさぶった。
「シンジ、シンジ、シンジ、シンジ、シンジーっ」
 三人は同時に達した。

 三人はしばらくの間、そのままの姿勢で動かなかった。
 それからシンジがゆっくりとレイの膝から両手を離し、後ろ手でアスカの両足をはずした。
 アスカはぐったりとレイに乗ったまま動かず、シンジのなすがままにされていた。
 シンジは背中を丸めてアスカに軽く口づけし、アスカの右側に顔だけ出しているレイにも口づけ
した。そして、そろそろと腰を引いてレイから退いた。
 レイは身体を斜めにしてアスカの背中からわきに移動した。
 アスカはものうげな表情でレイに協力し、寝床の中央に膝を大きく広げたままでねそべった。
アスカの長い金髪が広がって寝床をおおった。それは雪の野に投げ出された、刈り取られた稲穂の
ように見えた。
 レイは雪の野も、刈り取られた稲穂も見たことがなくただ知識で知っていただけだったが、
なぜかそういうふうに見えたのだった。
 レイとシンジはその両側に半身の姿勢で横になった。アスカが中央で、両側にシンジとレイ。
それは三人が愛を交わしたあとのいつもの風景だった。
 「シンジ、アタシもう最高だった」アスカはその言葉とは裏腹に、まだシンジを求めて片手を
シンジの股間に伸ばした。
 シンジはアスカのなすがままに任せていたが、それでもう一戦という気分ではないようだった。
 そのかわりにシンジは軽くため息をついた。「トウジ…今ごろ松代で参号機の起動実験中
だろうね」そしてはにかんだようにつけ加えた。「なんでだろう、ミサトさん、参号機の
パイロットがトウジだってこと、最後まで教えてくれなかった」
 「言いにくかったんじゃないの、ミサト」アスカは天井を見上げたまま言った。「アイツ、
全然乗り気じゃないし」
 「うれしいな」シンジはいつもの口調で言った。「仲間がふえる。うむ、うれしいよ」
 レイはアスカを見つめていた。
 アスカはシンジの笑顔に視線をやり、ちょっと見つめてから眉をひそめた。そして、突然
シンジに向き直り、片ひじをついて上体を起こした。
 「シンジ…アンタまさかアイツを…」
 シンジは黙ってうなずいた。できるかぎり軽い表情をとつとめているのがよくわかった。
 「じょ、冗談じゃない、アタシはイヤよ」
 シンジは大きくため息をついた。
 「この間も決めたよね、チームワークだって。一緒に戦わなきゃだめなんだよ、使徒に
   勝てないんだよ。トウジは仲間なんだ」
 「絶対にイヤ」アスカはあごを上げてそっぽを向いた。
 「アスカ」シンジがとりなすように言った。
 「なんでアタシが…しなきゃいけないのよ、あんなやつと。アタシ信じられないわ、あんたを…
どうして…」
 「アスカ、トウジのこと知らないから」
 「何を知らないって言うのよっ、アタシが、アイツの…」
 「トウジはやさしいんだよ」
 「シンジっ!!」アスカは両目をむいてシンジを怒鳴りつけた。アスカは喘いだ。両肩が上がり
大きく震えた。「あ、アンタ…まさか…」
 レイはアスカの過剰な反応が理解できなかった。「セカンド、あなたなぜそんなに
 興奮しているの」レイは黙っていられなかった。「碇君の、鈴原君に対する評価がどうして
 そんなに気にさわるの」
 アスカは視線をななめ下にさげ、小声で言った。「アンタの知ったことじゃないわよ」
 そしてしばらくの沈黙の後、「ヒカリがそう言ったのよ、あの男のこと。きのうの放課後、
 公園で。だから…アタシ思ったの、シンジがいつのまにかのぞいたんじゃないかって、あたしの
 心を」
 「アスカ、そんなことできるわけないってこと、一番よく知ってるよね」シンジは言った。
 アスカはうなずいた。
 「分かってるわよ理屈では…ただ…アンタが言ったことがあんまりヒカリと似ていたから、
 つい、よ」
 「本当のことだからじゃないかしら」レイは言った。
 「ファースト…」アスカはうつむいて首を振った。「アンタ、いつものことだけど、本当に
 キツいわね。アタシそんなに無神経かな」
 レイは首を振った。アスカはそれを見ていなかったが、それでも必要な動作なのだとレイは
思った。「セカンド、あなたは自分の見たいものしか見ない、それだけのことよ。見えなかった
ものは教えてもらえばいいだけ」そしてつけ加えた。「私が碇君から教えてもらったように」
 三人の携帯電話が一斉に呼出し音を告げた。
 「一度にっ」シンジがあわてて自分の携帯に手を伸ばしながら言った。
 「作戦本部からね」レイは言った。
 「ったく、いっしょにいることくらい知ってるんだろうから、一台呼べば十分なのにねっ」
アスカも携帯を手に取った。
 レイを呼び出したのは青葉シゲルだった。「綾波さんっ、至急作戦本部までお願いします」
切迫した声だった。「出動です」
 「はい」レイはそれだけ言って電話を切った。
 「出動だってさ」アスカはふたりに言わずもがなの台詞をはいた。「日向さんからだった」
 「伊吹さんからだった」シンジは言った。

 特務機関ネルフは野辺山に前線基地を展開し、三人はそれぞれのエヴァで待機した。松代で
事故らしい。ミサトたちの消息は不明。碇ゲンドウが直接指揮をとる作戦となった。

 「目標接近」青葉の声が耳元で響いた。
 「全機、地上戦用意」日向が言った。
 三人は身構えた。
 山の際に夕陽を背負った大きな影がまず現れ、その影を追う用にして巨大な黒い物体がすがたを
表わした。
 「まさか…使徒、あれが使徒ですか」
 「そうだ、目標だ」碇ゲンドウの声は平静だった。
 「目標って、これは…エヴァだ」シンジの声がした。「エヴァじゃないか…」
 「使徒に乗っとられるなんて」アスカがつぶやいた。
 「パイロットはまだ乗っているのですか」シンジは言った。「…パイロットは」
 トウジ、と言いたかったのね、とレイは思った。しかしそれはまだ公式になっていないこと、
シンジの口には出せないことだった。
 「構わん、そいつは使徒だ、我々の敵だ」碇ゲンドウは言葉を切り、沈黙した。
 「まだ、乗ってるんだね、了解」シンジはふたりに思念を送った。「今回の作戦、第一目標は
エントリープラグの回収だ、それから…使徒を殲滅するっ」
 「了解」ふたりは思念で応じ、三機は同時に参号機に向かって殺到した。
 「いっちばーん」アスカは鬨の声とともに二号機を参号機の正面左側から突入させ両腕で
参号機の腰を捉えた。
 シンジはその直後に右前方から参号機と接触、参号機の両腕をつかみ、胸をぶつけて引き寄せた。
 参号機はこの衝撃によろめいたが、両足を踏んばって持ちこたえた。
 しかしこれは二機の作戦だった。第一目標はエントリープラグであり、正面から突入して相手を
あおむけに倒すわけにはいかなかったのだ。
 レイはそのすぐ後ろから接近し、大きく跳躍して参号機の背後に着地した。大地が轟音とともに
揺れた。レイは零号機が空中にある間にプログレッシブ・ナイフの刃を起こして右腕に装着して
おり、そのままの姿勢で参号機の背中、エントリーハッチのあたりを縦横に切り裂いた。
あきらかにエヴァの体組織ではないものが飛び散った。エントリーハッチを閉じ込めていた
体組織が破壊されると、すでに強制射出状態になっていたエントリープラグが音を立てて水蒸気と
ともに排出された。 レイはプログレッシブ・ナイフを地上に突き立てると、半分以上突きだした
エントリープラグを両腕で慎重に捕らえ、射出を待たずに引き抜いた。
 そして、エントリープラグを確保すると、自分の機体に引き寄せ、かばうような姿勢をとって
参号機から離れた。
 「エントリープラグ確保、後はよろしく」
 レイは現場を最大速度で離脱し、前線基地に向かった。
 前線基地とはかなりの距離があったが、零号機の速度だとわずか数秒で駆け抜け、前線基地の
天幕の傍らにエントリープラグをそっと置いた。
 ネルフの職員が工具や武器を片手に何人も走り寄って来た。
 レイは零号機の指を伸ばすと、その先端から遠隔操作の腕を伸ばし、扉の強制開放棒を
つかんで容赦なく回転させた。
 たちまち扉が開き、中から大量の透明な液体が溢れ出た。
 銃を持った職員が中をのぞきこみ、顔をまわすと白衣の職員を手招きした。
 白衣の職員は膝を濡らしながらエントリープラグ内に這いこんで行った。
 レイはじっとその光景をみつめた。そして待った。胸の動悸がだんだんと早く、大きくなって
いく。
 白衣の職員が出て来て、初号機に向かって大きく手を振った。そして両腕を頭の上にのばすと、
大きく丸の形をつくり、満面の笑みを浮かべた。
 レイは笑顔で叫んだ。「参号機パイロットの生存を確認」
 「使徒、活動停止」伊吹が言った。「作戦終了…いいですか」
 「ああ…」碇ゲンドウは言った。「シンジ、よくやったな。しかし、どうして
 エントリープラグにこだわった、二号機は片腕を破損したぞ。最初から攻撃していれば…」
 「父さん…父さんはパイロットの命がどうなってもよかったの」シンジの声はかすれていた。
 シンジは父親を恐れている。そのシンジが、おそらく生まれて初めて父親に抗議の声を
あげたのだ。レイは、シンジの勇気に感心した。シンジは父親とトウジを天秤にかけたの
だろうか。その考えれはまちがっていたことをレイは思い知らされることになった。
 「使徒を倒すのが我々の目的だ」碇ゲンドウの声にはかすかなとまどいが感じられた。
 「はっ、何のために使徒を倒してるの、僕たちは何のために使徒と戦ってるの」シンジの声が
 だんだんと大きくなっていった。「人類を使徒から守るためじゃないの、使徒を倒すためなら
 人の命は惜しくないなんて、本末転倒じゃないか」
 「シンジ、何を言う」
 「父さんは使徒を敵だという。倒さなければならない敵だという。父さんは、単に使徒を
 倒したいだけなんじゃないの、そのためなら何をしても構わず、誰がどうなっても
 気にしない…父さんは僕たちを単なる使徒の処刑人にしたいだけなんだよ」
 「シンジ」アスカがたまらず口をはさんだ。「もうよしなさいよ」
 「シンジ」碇ゲンドウが言った。
 「なんですか…総司令」シンジはその声にありったけの敵意をこめていた。
 「お前はもうエヴァに乗らなくていい。帰れ」
 「…はい」
 「碇、それはいかん」冬月が言った。
 「命令だ」碇ゲンドウは構わず続けた。
 「賛成できんな」冬月は抗議した。口調はいつもと変らずゆったりとしていたが、同様
に断固としていた。「使徒の殲滅には成功したではないか、それを懲罰とは」
 「命令違反だ、問題ない」
 「そうかな」
 「ああ」
 レイは冬月がなぜシンジをかばうのか分からなかった。
 「では、残るふたりのパイロットも同罪だな」
 「何っ」碇ゲンドウは初めて狼狽した。「冬月、どうして」
 「あたりまえだ。三人の共同作戦だったのだからな。同じ行動に対して、異なった評価を
 下しては部下に対して示しが付かん。指揮官失格だぞ」冬月の口調には妥協の余地がなかった。
「いいんだな、碇」
 結局冬月は組織としてのネルフをより重視したのだとレイは思った。
 碇ゲンドウは沈思した。
 「パイロット三名は別命あるまで自室で待機、以上だ」
 「はい」誰も返事をしなかったのでレイは三人を代表して答えた。
 その時、レイは殺意を感じた。それは敵意ではなく、もっと明白な、冬月コウゾウに対する
碇ゲンドウの殺意だった。





+続く+




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