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Wounded Mass - ss:02

置き去りにされた哀しみを

 放課後、レイはシンジがたずねてくるのをアパートの自室で待っていた。
 昼休み、レイはシンジから人気のない屋上に呼び出された。葛城の帰りが遅いのだとシ
ンジは言った。お金をもらっているから椅子を買いに行こう、そして夕食をいっしょに食
べようとも言われた。
 レイはうれしくてすぐにうなずいた。そして、放課後すぐに帰宅して部屋でシンジを待
つ手筈になった。
 ふたりは何食わぬ顔で別々に教室にもどった。
 そして今、レイはシンジが扉を叩く音を聞き、ひとつしかない椅子から立ち上がって玄
関に向かった。
 「どうぞ」レイは声がはずむのをがまんできなかった。
 「やあ、綾波」シンジはドアを開き、笑顔で微笑んだ。そして、中にはいって後ろ手に
扉を閉じると、自然な流れでレイの左のひじを軽く抱き寄せ口づけした。
 それは短い、あいさつがわりのものだったが、レイは全身が熱くしびれるような気分に
なった。あれ以来、そうした性的な刺激に敏感になっているのが分かった。
 シンジは学校の帰りで、レイと同様に制服のままだった。シンジは玄関にかばんを下ろ
すと「さあ、買い物に行こう」とレイのひじを軽く引いた。
 「ええ」レイは小さくうなずいて靴をはいた。
 ふたりは並んで歩いた。今日の授業は午前中だけで、外は一番暑い時刻だった。ふたり
は街路樹の日陰を歩いた。
 「綾波」シンジが前を向いたまま小声で言った。
 「なに」レイも前を向いたまま応えた。
 「こうしてるとなんか、恋人みたいだ」
 「碇君」
 「え」
 「みたいじゃないわ、本当に恋人同士でしょ私たち」
 シンジは照れて笑った。「ごめん」
 「どこに行くの」
 「隣の駅のデパートどうかな。大きな家具フロアあったよね」
 「多分」
 ふたりは軌道車両の駅まで歩いた。そして汗をぬぐい、改札を抜けてホームに上がった。
 「ああ」シンジがホームでため息をついた。
 「どうしたの」
 「日陰にはいるとすこし楽だ、それにあの景色。きれいだよね、綾波」
 レイはシンジの視線を追った。
 少し高い山並みが雲一つない青い空に向かってそびえていた。緑色の木々が立ち並びふ
ぞろいな梢が稜線を複雑なものにしていた。
 レイはその稜線の緑と青のコントラストに目を奪われた。これまで、そういった風景を
美しいと思ってみたことがなかったことに気がついたのだった。そして、よく見れば木々
の緑は一本一本がすべて少しずつちがった風合いをたたえている。レイはその発見に胸を
打たれた。
 「綾波」
 レイはシンジの声に我に返った。
 「乗ろう、出ちゃうよ」
 「ええ」
 ふたりは慌てて車内にかけ込んだ。しゅう、と音がして扉が閉まった。ふたりはそのま
ま扉のそばに立って外を眺めた。
 「ね、きれいだろ」シンジが言った。
 「ええ」レイはうなずいた。「はじめて、こんな気持ち」
 「そうなの」
 「いつも教室から外を眺めていたわ。そして、ただ風景が目にはいってきていただけだ
ったことがわかった。私、見ていなかったのね」
 「そうか、新発見か」
 「碇君のおかげ。ありがとう」
 「そうなの。うれしいよ」
 車両は次の駅のホームにはいった。扉が開きふたりはホームに出た。そして改札を抜け
てそのままデパートにはいった。
 「何階かな…ああ、七階だ」シンジが案内板を見上げて言った。「行こう」
 「ええ」
 ふたりはエスカレータに乗った。
 ふたりの両側を風景が流れて行った。紳士服が近づき、遠ざかった。そして婦人服、も
う一度婦人服、そしてスポーツ用品、そして生活雑貨。
 ふたりは手をつないで家具フロアに立った。
 「うぁあ」
 ソファがあった。サイドボードがあった。げた箱が、洋服だんすが、ベッドが、ソファ・
ベッド、シングルベッド、ダブルベッド、二段ベッドが、学習机が、本棚が、食器棚がず
らりと並んでふたりをむかえた。そしてダイニングテープルと椅子があった。
 「どれがいいかな」シンジは手近の椅子を引いて自ら座った。「綾波」
 「なに」
 「綾波も座ってみなよ、はしから順番に」
 「何のために座るの。どれでも同じでしょ」
 「ちがうよ、ちがう」
 「ちがうの、どこが」
 「全部ちがう、座ってごらんよ分かるから」
 「そ」
 レイは従った。まず一つ、シンジの座っているテーブルの椅子を引いて座った。
 「その感じ、よく覚えておいて隣の椅子に座るんだ」
 「わかった」
 レイは立ち上がり、隣のテーブルの椅子をひいた。「重いわ」
 「ほら、重さがちがう」
 レイは座った。「固い感じ」
 「座面が木だ、こっちには布のクッションがはいってる。綾波はどっちが好きなの」
 「どちらでもかまわないわ」
 シンジは腕を組んだ。「もうひとつ、試してみたら」
 「そ」
 ふたりは立ち上がりまた座り、次々と椅子をためしていった。
 「これ」いくつめかの椅子でレイは突然言った。
 「なに」シンジはレイに振り向いた。
 「これがいいわ」レイは不思議そうに自分のふとももの乗った椅子の座面を両手でなで
るようにした。「不思議。腰も、背中も、とてもなじむの」
 それはごく普通の木製の椅子で、特徴といえば細い足なのに補強がないことくらいだっ
た。座面は固めの布で見た目ざらざらしていたが座っても不快感はなかった。
 シンジは微笑した。「そうか、よかったね綾波、気に入った椅子が見つかって」そして向
かい合って座った。「うぁあ、こりゃあいいカンジだ、よく見つけたね綾波。さてお値段は」
 「どうしたの」
 「あ、いや…ちょっと、高いかな、って。ジェイ・エル・モラー…デンマーク…ああ、
でも、だいじょうぶ、ミサトさんかなり多目にくれてるから」
 シンジはテーブルの上の値札を手に取り、片手を上げて店員を呼んだ。
 「この椅子ひとつください」「かしこまりました、お届けしますか」「お願いします」「四
日後でよろしいでしょうか」
 レイはポケットから手帖を取りだした。ぱらぱらとページをめくり「予定なし」
 シンジはうなずいた。「それでお願いします」「お届け先の住所とお名前をここに記入し
てください」「はい。綾波、自分で書いてよ」
 「わかった」レイはペンを受け取って自宅の住所と名前を書きこんだ。シンジが店員に
クレジットを渡していた。
 書き終わった紙とペンをシンジに渡すと、シンジは微笑して受け取った。そして全部店
員に渡した。「じゃ、よろしく」「ありがとうございました」
 ふたりは下りのエスカレータに乗った。
 「うれしそうだね、綾波」
 「そうお、わかるの」
 「そりゃ、顔見ればわかるよ」
 レイは身体の芯から熱くなって頬が赤くなるのが分かった。「ええ…うれしいの」
 「晩ご飯、何にしようか、綾波、リクエストあるかな。え…と、作れるものなら、だけ
ど」
 レイはちょっとおどろいて後ろに立つシンジを見上げた。「碇君、食事作るの」
 シンジはうなずいた。「得意だよ、安心して。先週の実習でも失敗しなかったし」
 レイはうつむいた。「うち、道具ないから」
 シンジの手を肩に感じた。レイは顔を上げた。
 シンジの笑顔が出迎えた。「じゃ、買っちゃおう、まだクレジット残ってるし」
 「え」
 「ほらこの階だ」シンジはレイの手を引いた。「台所用品、なんでもそろってる」
 そして、鍋がずらりと並んだ棚にレイを連れて行った。
 レイは思わずうつむいた。シンジの左手がレイの腰にまわっていた。「碇君」
 「あ、気になるの、綾波」
 レイは首を振った。「うれしいの」
 シンジは聞こえなかったように腰から手を離すと、両手で小さな片手鍋を取り上げた。
「これなんか、使いやすそうだよ、ね、綾波」
 レイはどぎまぎしてうなずいた。「碇君がそう言うのなら」
 「よぉし、じゃ決まりだ」
 そして、フライパン、包丁、菜ばし、何枚かの皿とボウル、フォーク、スプーン、ナイ
フ、グラスとカップが購入対象になった。
 選んでいくうちに、レイはだんだんとそれが面白く感じられるようになった。そして、
それまではシンジから渡されるものを吟味して感想を述べていたのが、自分から手を伸ば
すようになった。
 荷物はふたりの両手に余った。「これも配達してもらおう」「そ」
 「料理、今日はできなくなったね」「ええ」「何か買って帰ろうか、いっしょに食べるの
に」「わかった」
 ふたりは食品売り場に降りて出来あいのものをいくつか買い、帰途についた。
 改札口をくぐると、レイは人目も気にせずにシンジの腕に抱きついた。
 「あ、綾波」
 「碇君、今日、楽しかった」
 「ぼくも。クレジット使っちゃったけど、また何かちがうこと考えよう、ふたりで」
 「ええ」
 帰りの車両の中で、レイは椅子を選んでいた時のことを思い返していた。モラーの椅子
に出会うまでにいくつためしたのだろう。数えていなかった。数えていたらおもしろかっ
たかもしれない。木の椅子、パイプの椅子、軽い椅子、重い椅子、回転する椅子、リクラ
イニングする椅子、いろいろあった。
 レイは車外をなにげなく眺めた。やや傾いた日差しの中に輝いている森の木々が目に飛
び込んできた。椅子の記憶と木々の情景が混ざり合い、突然、それまで単なる雑踏に過ぎ
なかった行き交うひと達ひとりひとりが同じように個性をもっていて全員がちがうのだと
いうことに気がついた。レイはのどの奥に何かがつまっているような気がした。レイは歯
を食いしばった。
 「どうしたの」シンジが心配そうに聞いた。「綾波、気分が悪いの」
 レイは首を振った。そしてシンジに視線を移し「新発見したの」と言った。
 車両がホームに滑り込み、扉が開いた。
 レイはシンジの空いた方の手を引いて車両を降りた。そして両手でつかまり並んで歩い
た。
 「こうやってすれ違う人みんながちがっていることが分かったの。今まで全部他人だっ
たから同じに見えていたの」
 「どうして分かったの」
 「森の木がきれいだって、碇君言ったわね」
 シンジは首を引いた。
 話題の転換について行けなかったのだとレイは気づいた。「それで木を見ていたら一本一
本みんな色や形がちがっていたわ」
 「そう言っていたね、行きの電車で」
 レイはうなずいていったんシンジから手を離し、改札口をくぐった。そしてまた並んで
歩いた。「帰りに椅子を選んでいた時のことを思いだしていたの。いろんな椅子があったわ。
みんなひとつひとつちがっていた。それで、なんとなく外を見たら木が見えたの、そうし
たら突然、ちがっているのは木だけじゃないことに気がついたの。人もみんなちがってる
ことに気がついたの、知らない人でもみんなひとりひとりちがっているの、きれいなの。
みんな生きているの」レイはうつむいた。「その時、私も生きているんだなって思ったの」
 シンジの手がレイの腰に回って、レイを引き寄せた。
 レイはシンジにもたれて歩いた。
 「それで私うれしかったんだと思うわ」
 「うむ」シンジはそれ以上なにも言わなかった。
 ふたりはだまって歩いた。建設機械の規則的な音が響いた。
 レイはその音と自分の鼓動が重なっているような気がした。レイはしがみついているシ
ンジの腕にほほを寄せた。
 ふたりはアパートにはいりエレベータで昇った。
 レイは玄関の扉を開き、先にはいった。
 「ただいま」シンジが後ろから言った。
 「ただいま」レイもならった。
 レイはシンジの鞄を持ちあげて中に進むと、寝台の足元に置いた。
 シンジは買ってきた食品を袋ごと冷蔵庫に入れた。
 ふたりはだまって向き合い、どちらともなく両手を伸ばし抱き合って口づけした。汗で
ねとついた膚が触れ合い、それだけでレイの全身がぶるぶるふるえた。
 レイはシンジの両脇から差し入れた手でシンジを抱き寄せた。
 シンジはレイの両手を抱いた。
 ふたりの胸が触れ合い、ブラジャーの下で乳頭が潰れた。
 レイは胸をゆするようにして、もっと刺激を求めた。
 ひとしきり抱き合ったあと、ふたりはいったん離れて互いのシャツのボタンをはずした。
レイは自分でジャンパースカートのスナップとブラジャーをはずし、シンジはベルトをゆ
るめてズボンを脱いだ。下着も取るとふたりは抱き合って寝台に横になった。
 ふたりは肩を下にして向かい合い、口づけし、両手は互いの敏感な部分を求め、足をか
らめた。
 シンジの片手がレイの乳房をつつみこみ、ゆっくりとこねるようになで回した。
 レイは口を離すと目をつぶったまま小さくため息をついた。「碇君、そこ…もっと」
 そしてレイの右手はシンジ自身を捉え、下から支えるように包み込んでゆっくりと前後
に刺激した。
 たちまちシンジは反応して固く、膨張しはじめた。
 「綾波、ゆっくり…そっとね」
 「わかった」
 シンジの反対側の手はレイの腰にのびていた。
 レイはシンジの手のひらを下腹部に感じ、少し触れられただけで全身に痺れるような衝
撃が走るのを気持ちいいと思った。そしてひざを開いてシンジの指を迎え入れようとした。
 シンジは応えて指を伸ばし、秘部の両側をゆっくりと刺激するように前後させた。
 レイはその快感に身もだえて片手でシンジの頭を強く抱いた。
 シンジの頭が下がってレイの胸にはいった。シンジはレイの胸に口を当てて吸い、舌先
で乳頭を刺激した。
 レイの全身が痺れ、快感の波が押し寄せてくだけ、シンジ以外はなにも感じられず自分
自身の存在が溶けていった。レイは大きく首をのけぞらせて、それから体勢を変え、ひざ
を曲げて大きく開き、シンジの下にもぐりこんだ。
 シンジはレイの開かれたひざの間に割ってはいり、シンジ自身をレイにあてがった。
 レイはシンジ自身がレイに触れているのを感じ、自ら腰を上げてシンジを迎え入れた。
その部分からレイの全身が波打って痙攣した。「あーっ、あーっ、あーっ、碇君、いかりく
んっ」レイは両腕でシンジを抱きしめ、シンジの動きに合わせて腰を振った。そのリズム
に合わせて新しい快感の波がレイを包み、レイはもう声が出せず、ただ荒い息を動きに合
わせてはいた。レイのからだはえびのようにしなって腰が浮き、肩と頭で支えてシンジと
いっしょに動いた。
 シンジはレイの浮いた腰に負担がかからないように自分の身体を片手のひじをついて支
え、反対側の手でレイの腰を背中から支えて動きを補助した。
 そしてふたりは互いの存在だけを意識し、他のなにも存在しない世界に没入して行った。
音もなく、光もなく、匂いもなく、暑くも寒くもない、部屋も消え寝台もクッションもシ
ーツもないふたりだけの世界で聞こえるのは互いの吐息だけ、見えるのは互いの瞳の中の
自分の顔だけ、漂うのは互いの汗と甘酸っぱい体液の香りだけ、そして互いの体温だけが
あった。そこでふたりは互いの肉体の緊密な交わりを越えて心の中で緊く緊く交わりあっ
た。それはまさに全世界がふたりだけの世界と等価値であることを、理屈ではなくからだ
で体感できるものだった。ふたりの心は互いに混じり合い、永遠に続くこの瞬間はかけが
えのない貴重な一瞬なのだと認めあえた。
 突然世界がもどってきた。
 「はあっ」シンジが思わず声を漏らした。
 レイはシンジのほとばしりを受け止め、最後の余韻をかみしめるように力をこめてシン
ジ自身を強くからみとめた。
 シンジ自身の存在が遠くなり、心とからだに空洞が残るような気がした。レイは首を振っ
た。「まだだめ」
 シンジがレイに口づけした。「綾波、すてきだったよ」
 レイはうなずいた。「ありがとう」
 そしてふたりは愛の余韻を楽しむように口づけし、ほほを寄せ合い、眼を閉じて寄り添っ
た。
 聞き慣れないクラシックのフレーズが安っぽい音響で響いた。
 「何」レイは不安に駆られた。この部屋で初めて聞く音だった。
 「で、電話だ」シンジは寝台の下に手を伸ばし、鞄の中から電話を出した。「ミサトさん
からだ、どうしよう」
 「出て。緊急事態かも知れない」
 「わかった…もしもし、はい、ミサトさん、どうしたんですか、使徒ですか…はい…は
い…わかりました。え、司令部まであとどれくらい」
 「二十二分」レイがシンジの耳元で囁いた。
 「あと…に、二十五分で行きます、はいっ」シンジは電話を切って大きくため息をつい
た。そしてレイに振り向き「使徒じゃなかった。汎用人型対戦兵器を開発した会社があっ
て、お披露目で暴走したんだ。原子炉をつんでいて、爆発するかもしれない。ミサトさん
はエヴァが必要だと言った」
 シンジは寝台を降りた。「行かなくちゃ」
 「ええ」レイは上半身を起こし、うなずいた。「私は」
 シンジはレイを見た。「今は動けない。綾波はこの情報を知らないことになってる。ここ
にいてよ」
 「分かった」
 シンジはシャワールームに飛びこみ、まばたきする間にタオルで股間を拭いながらもどっ
てきた。「このタオル、洗って返すから」
 「いいわ、置いていって。私洗うから」
 「ありがとう」
 シンジは大急ぎで身仕度した。
 レイはそれを黙って眺めていた。
 服を着ると、シンジはひざをついてレイに正対し、片手をレイのあごに伸ばした。
 ふたりはまた口づけした。軽い、別れのあいさつだった。
 突然レイは胸の奥からこみ上げてくる感情に負けて涙を流した。「碇君死なないで」
 シンジは深くうなずいた。「だいじょうぶ、綾波が双子山でぼくを守ってくれたように、
今度はぼくが綾波を守る、そしてふたりでごはん食べよう」
 「ええ」レイは鼻水をすすってうなずいた。愛するものとの別離がこれほどつらいこと
だとは夢にも思わなかったのだった。もしも自分がシンジと一緒に出撃できていたら、こ
れほど悲しい思いはせずにすんだろう。レイは自分の機体を壊したことを後悔した。そし
てその思いはエヴァに乗れない市民がどれほど心細い思いで使徒の侵攻を迎えているのか
に至り、レイはその恐ろしさにことばを失った。
 シンジは誤解した。「綾波、安心して。ここで待っててくれ」そして「愛してる」そして
立ち上がり、鞄を肩にかけ、きびすを返して玄関に向かった。
 レイは寝台に起きあがった姿勢のまま動くことができず、後ろから呼びかけた。
 「碇君がんばって…愛してる」
 シンジは振り向かず、ただ右手を上げて応え、レイの視野から消えた。
 レイはシンジの無事を願って寝台に涙を流した。





+続く+




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