「It’s something unpredictable,but in the end is right.」

台所に置いてあるラジオから聞えてくる、歌。

聞いた事がなかったし外国の歌だから歌詞も分からなかったけど、覚えやすいメロディーだったので鼻歌を歌いながら、包丁で野菜を切る。

「I hope you had the time of your life.」

アコースティックギターを中心としたその曲は、素直に美しいと感じた。

「It’s something unpredictable,but in the end is right.I hope you had the
time of your life.」

その言葉で曲は締めくくられた。

言葉が分からなくても、音楽の持つ普遍的な魅力は伝わってくる。

そんな曲だった。

「……それでは、今日の第三新東京市の天気です。津田さん、お願いします」

綾波は、まだ寝ている。

昨日の疲労が残っているのだろう。

今日は特に急がないといけないわけでもなかったので、この食事が出来るまで。

あと、もう少しで、起こしに行こう。

「はい。今日の天気は……」

味噌汁の味を確認する。

今までそんなに作ったことがなかったけど、多分これは上手く出来ていた。

二つ用意していたお碗に注ぎ、食卓に運んだ。

「午前中は晴れです。気温が高くなるので、暑さ対策はしっかりとしましょう」

あとは、オーブントースターで焼いているパンが出来れば、完成だ。

……よし。

「綾波、朝だよ」

僕は綾波の部屋へ向った。





「……午後になると曇りのち雨です」




















蛹の夢:傘と夕暮れ



















「あれとかどう?」

ディスプレイされている、黄色いワンピースを指差して尋ねる。

「……分からない」

「じゃあ……あれは?」

「……」

綾波は困ったような表情を浮かべて、店内をきょろきょろと見回して。

「……ごめんなさい」

しゅんっ、となってしまい、悲しげに俯く。

「え……いや、綾波は別に……」

誰も悪くないのに、何故か僕が悪かったような気がした。

「……じゃあ、また後で来ようよ。その時になったら、どれがいいか分かるかも知れないしね」

一通り服のフロア−を見て回って、綾波が気に入ったものは、なかった。

いや、あったのかも知れないけど、口には出さなかった。

……そんなに深く考えずに、気分で選ぶ位の気楽さでいいと思うんだけどなあ。

「じゃあ、上に行こうか?」

このデパートに来て、真っ先に寄った店が、ここだった。

エスカレーターで上がって来て、一番最初に用があったのがここだった、というのが理由だけど。

まだまだ買わなくてはいけないものは山ほどある。

僕の背中の鞄の中に入っているものは、父さんから預かっている生活用のキャッシュカードが入った財布など。

……この買い物は、実はかなり経済的にきつい。

昨日、父さんと会った時に、買い物に行くことを話しておけばよかった、と少し後悔する。

実際、すごく夢の無い話なんだけど、まだ綾波の生活費のこととか話し合ってないし、それも合わせて今度言わなければ、と思った。

……でも、待てよ?

今まで、綾波はどうやって生活していたんだろう。

聞いていいことか悪いことか、判断に迷ったけど。

「綾波、綾波の今までの生活費って、誰が払ってたの?」

さり気なく聞いてみる。

綾波は、少し考えて。

「……分からない。多分、碇司令だと思う」

「そっか。いや、いいんだ」

予想していただけに、当たってもちっとも嬉しくなかった。

けど、それなら全く問題はなかった。

上りのエスカレーターに乗り、次の階にある店舗を確認する。

次のフロアは、家具のフロアだった。

「ここで見ないといけないのは……ベッドと、机か」

今、綾波の部屋になる予定の空き部屋には、本当になにもない。

だから、中学生の部屋にある全てのものを、一から買わないといけなかった。

まあ、クローゼットはついてるし、他に要るとしたら本棚くらいだけど。

綾波は本を一冊も持ってないし、それは後々考えればいいことだった。






第三新東京市の中心部にある、巨大な繁華街。

その中にあるこのデパートに、今日僕達はやって来ていた。

ここなら買わないといけないものはほとんどあるし、家からバス一本で来られる。

僕は一回も来たことはなかったけど、話に聞いた通りのかなりの大きさだった。

「見ただけじゃ分からないだろうから、座ってみたら?」

綾波はベッドの感触を確かめるように、指で押したりしていた。

「……いいの?」

「多分ね」

僕の方を振り返って、それから恐る恐るベッドの端に腰を下ろした。

「どう?」

「……普通」

綾波は確認し終えたのか、立ち上がって。

そして、次のベッドを確認する為に、移動した。

それを何回か続けた後。

「どれか、気に入ったの、あった?」

「……あれ」

綾波が指差したそれは、見覚えのあるシルエットだった。

近づいてよく見ると、やっぱり思い違いではなかった。

「……これって、僕のと同じタイプだよね」

綾波は小さく頷く。

それは、色こそ違うものの、大きさと形は全く僕のものと同じ。

「……これで、いいの?」

再び無言で頷く。

僕が貸していたベッドを、思いのほか気に入ってくれていたということだろうか。

もしそうだったのなら、ここ三日間、リビングで寝た甲斐もあったというものだった。

僕は、レジの方に目をやった。

若い女性の店員が、店内に一組しかいなかった客である僕達を、笑顔で見ていた。

「すみません」

気付くように、手を上げて呼ぶ。

その店員は、小走りでこっちにやってきた。

「いかがなされました?」

「えっと、これを買いたいんですけど……」

綾波は、僕と店員のやり取りを、少し離れた位置から見ていた。











昼時のハンバーガーショップには、人が溢れ返っていた。

休日の家族連れがそのほとんどだったから、制服を着た僕達は彼等にはおかしく写ったかも知れない。

窓の外を見ながらそんなことを考えつつ、運ばれてきたチーズバーガーを頬張る。

綾波はポテトをちょびちょびとかじっていた。

「他に、欲しいものとかあったら言ってね」

今さっき、支払いの時にネルフ印のカードを見た店員のびっくりした表情を頭の中で思い浮かる。

僕が思っている以上に、ネルフはすごい組織なのかも知れなかった。

「……うん」

綾波は、短くなったポテトの残りを口に含み、噛んで飲み込んだ。

左の椅子に置いてある買い物袋に目をやる。

勉強机も注文したし、この店に来る途中に、綾波が自分で選んだピンクの弁当箱も買った。

どこかで見たことがあるパジャマやタオル類も、綾波の足元に置かれてある袋の中に入っている。

あとは。

チーズバーガーを食べ終え、手元に残ったドリンクを、ストローを使って飲む。

綾波は油で汚れた指を、紙を使って拭っていた。

「行こっか」

トレイを持ち、立ち上がると綾波も続いて立ち上がり、僕のやるように後片付けをした。

戸惑いつつも一つ一つのことをやる綾波。

そして、次の時には、それを完璧にこなす。

もともと出来ていたのだろうから、それは当然のことなのかも知れないけど、

見ることが出来ない内面の回復ではなく、それは目で見ることの出来る回復だった。

手に持った荷物は、けっこうな重さだった。

綾波に重いものを持たせないように気をつけて、軽い袋を持ってもらってるけど。

「……それ、持とうか?」

僕の持っている袋も決して重いとは言えず、余裕はまだまだあった。

けれど。

「……いい」

そう言って、両手の荷物を離そうとはしない。

……僕に気を使っているのだろうか?

そんなに気にしなくていいのに。

「……そっか」

ハンバーガーショップから出ると、すぐ右手にエレベーターがあった。

ここは二階。

僕は、上のスイッチを押した。

一階にあったエレベーターはすぐに上がってきて、ドアが開く。

先に乗り込み、続いて綾波が乗って来る。

四階のスイッチを押して、ドアを閉めると同時にエレベーターは動き出した。

三階で止まることなく目的の階に着くと、そこにはさっきと変わらない光景が広がっていた。

色とりどりの服、服、服。

綾波はまだ決めかねるようで、一つずつをじっくりと眺めながら移動する。

「決まった?」

「……まだ」

急かすつもりはなかったけど、綾波にはそう受け取られたのだろうか。

綾波はどれかを選ぼうとして、逆に混乱してしまったようだった。

僕は、じっくりと、選ぶのを待った。

けど、やっぱり、決められないみたいだった。

「……いや、今日無理に決めなきゃいけないわけじゃないし……無理して選ばなくてもいいよ。また来ようよ」

綾波は、手に取ったシャツを棚に戻した。





「……ごめんなさい……」



その、消えてしまいそうなほど小さく発せられた綾波の言葉。

はっとして、綾波の顔を見つめる。



「綾波……?」



綾波の瞳には、かすかに涙が貯められていた。

「ごめんなさい……本当に、分からないの……」

綾波は、零れそうになった”それ”を、手で拭った。



「……あ」

自分の犯してしまった失敗に気付いて、声を出してしまった。

……やってしまった。

「いや……ごめん……綾波」

自責の念に駆られる。

そうか。

僕は、勝手な思い違いをしていたんだ。

ベッドも、弁当箱も、パジャマも。

綾波自身が、これが欲しい、と思って選んだんだと、思っていた。

けど。

完全に頭になかったしそれは、本当にかすかなヒントだったけれど、よく考えてみると。

それらは全て、僕が日常で使っているものと、同じものだった。

ベッドだけではなく、綾波の選んだパジャマは、最初の日に僕が貸したやつの色違い。

弁当箱もそうだった。

きっと、綾波は。

まだ、どれがいいかとか判断することが出来ない状態だったのに。

僕が、綾波と一緒に買い物をするのを楽しみにしていたのを、知っていたんだ。

だから、僕の気分を、悪くしないように、と思って。

気に入ったふりをしてまで、選んだんだ。





「……ごめん」

綾波は俯いて、また目を拭った。




気まずい空気が、流れた。

こういう時に、どんなことを言えばいいのか、分からなかった。










「……そうだ」

綾波は、僕の顔を見上げる。

「僕が、プレゼントするよ」

「え……?」

きょとんとした表情の綾波。

「僕が、綾波が似合いそうなの選んでプレゼントするよ。だったらいいでしょ?」

「……でも」

「プレゼントしたいんだ。ね?」

必死に言葉を続ける。

そうしないと。

綾波の心が、遠くへ行ってしまうと、思ったから。

綾波は、突然すごい勢いで話し出した僕に困惑したようだったけど。

「……うん」

首を、縦に振った。

「ちょっと待っててよ……考えるから」

取りあえず、場の空気は良くなったと思う。

問題は、ここからだった。

果たして、僕に綾波に似合う服が選べるかどうか。

昨日読んだファッション雑誌も、無駄にはならなくて良かった。

……けど、正直、僕のファッションセンスは……。

どんな結果になっても、それはもう謝るしかなかった。

店内を練り歩き、イメージを膨らませる。

僕は、連想することから始めた。

綾波から連想される、色。

……白。

そんなイメージ。

僕は目の前にあった、白いものを手に取った。

それは、何の変哲もない、Tシャツだった。

……これは、どうなんだろうか?

プレゼントとしては、圧倒的にインパクトに欠ける。

けど、よくよく考えてみると、綾波は他の服を一切持っていない。

だったら、変に洒落たものじゃなくても、普通のものでもいいんじゃないだろうか。

そんなことを、それと綾波を交互に見ながら考える。

それに。

綾波は着飾らなくても、普通の格好で十分に、可愛いと思う。

……と思うのも、自分の選んだものを正当化させる為なのかも知れない、と思いつつ。

でも、何もない状態で、例えばドレスなんかをプレゼントされても、極端すぎてきっと困るだろう。

覚悟は、決まった。



「……これなんか、どう?」

ハンガーのかかった状態のそれを、綾波の前に持って行く。

綾波は、それを興味深そうに眺めていた。

「……どう、かな」

綾波の反応が気になり、つい二度も同じことを聞いてしまう。

しばらくそれを見た綾波は。

「……ごめんなさい。やっぱり……」

と、寂しそうに言った。

「……ま、まあ、今回は僕に勝手に選ばせてよ。僕はこれ、似合うと思うんだけど」

そう自分で進行しないと、話は進まなかった。

「……っと、あとは、下か」

そこで再び考える。

この場合、スカートか、ジーンズか。

Tシャツは僕も着るし、男女共有のものだからなんとなく分かるけど、スカートはちょっと無理だった。

となると。

売り場を見渡して。

「あっちだ、行こう?」

店のかごの中にシャツを入れ、それを持って移動する。

女性物のジーンズ売り場に近づいたことすらなかった僕は少し戸惑ったけど、目ぼしいものを一つずつを手にとって、広げてみたりしてみる。

でも、どれもしっくり来る感じはしなかった。

棚に戻して、次の棚に移動しよう、と思った時。

店の天井の方に展示してあった、女性のモデルが写ったパネルが目に入った。

その女性は、ちょうど白いTシャツに、薄い青色のデニムパンツを身にまとっていた。

それは直感だった。

きっと、綾波にもいけると思った。

同じような感じのパンツを捜し、それを手に取る。

「……これ、どうかな」

綾波に形が良く見えるように、広げて掲げてみる。

やっぱり、綾波は、難しい顔をしていた。

と、その時。

僕の視界の端に移ったものが、こっちに移動して来ているのに気付いた。

「試着なされますか?」

右側からやって来た女性店員。

にこにこして、綾波に話し掛ける。

綾波は、どうしたらいいか分からない、といった顔をして。

「綾波、それ、穿いてみなよ。穿いたら多分、違う印象になると思うんだ」

僕も勧める。

正直、見てみたい、という欲求があった。

綾波は。

「……分かった」

ちょっと間を置いて、答えた。

「じゃあ、はい」

ジーンズを手渡そうとしたら。

差し伸べられた綾波の手に、荷物があったのに気付いて。

「綾波、その荷物、持っててあげるよ」

まず、綾波の手から荷物を受け取って、それから改めてジーンズを手渡した。

それを見届けた店員は、笑顔で。

「こちらで着替えになられて下さい。どうぞ」

綾波を、すぐ傍の試着室へと案内した。










待つこと、五分くらいだっただろうか。

カーテンがもぞもぞと動き、開けられた。

「……すごいな」

言葉を失った。

服がすごいから、とかではなかった。

その、普段制服しか着ていない綾波からは、想像出来なかったイメージ。

イメージが変わるだけで、人はこんなにも違う風に見えるものだったことを、初めて知った。

綾波は、恥ずかしげに、目を伏せている。

「いいよ、綾波。すごくいいよ」

僕がそう言うと、綾波は。

「……そう?」

と、どこか納得がいかないような口調で言う。

「お決まりでしょうか?」

先ほどの店員が、にこにこしながら話し掛けてきた。

「はい。これでおねがいします」

鞄から財布を取り出しながら、言う。

綾波は、それからどうしていいか分からない、みたいな顔をして。

「えっと、綾波、ごめんけどそれ、買うから脱いでくれないかな?」

何か綾波を振り回しているような気がして、少し心が痛んだ。

綾波はそれを聞くと、再びカーテンの奥に消えようとしたら。

「着たままでも大丈夫ですよ。そのままお帰りになられても」

店員が言った言葉で綾波は立ち止まり、こちらに向き返った。

「……」

綾波は、僕に何かを求めるような目を向けた。

「いいんですか?」

「ええ。値札を切るだけですから」

服のポケットからはさみを取り出して言う。

確かに、制服に着替えるよりも、その方が早いし。

それに、僕も、普通の服を着た綾波を、もっと見ていたかった。

「どうする、綾波?それ、着たままで帰る?」

綾波の目を見て、言う。



綾波は、首を横に振った。





「……汚れたりしたら、いけないから」





















やけに暗いな、と思っていたら、バスの内部に電灯がついた。

休日の道路はいつもより混んでて、スピードはそんなに速くない。

けど、家までの、何もすることがない時間も、何故か退屈には感じなかった。

窓側に座っている綾波をちらりと見る。

綾波は、服の入った紙袋を、大切そうに抱えて、窓の外を眺めていた。

「……あ」

「……どうかした?」

綾波は、窓の外を指差した。

「……雨」

ぽつぽつと降り出した雨は、家に近づくにつれ激しくなっているような気がした。

「うわ……荷物、濡れるかもね」

僕は鞄の中に入っている、折り畳み傘を確認して。

ちゃんと天気予報を見ておけばよかった、と後悔した。

これ一つで二人分をカバー出来るだろうか?

それが心配だった。

「次は、○○。○○です。お降りのお客様は、バスが止まってからお立ちになられて下さい」

運転手のアナウンス。

「綾波、押して」

窓側の停車ボタンを、綾波はゆっくりと力を込めて押す。

バスが停まったのを確認して、席から立ち上がる。

僕は傘と荷物とバスカードを手に持つ。

「大人二人です」

運転手が機械を操作して、どうぞ、と言われてからカードを挿入する。

五千円のバスカードは、そろそろ切れそうになっていた。

「ありがとうございました」

「……ありがとう、ございました」

ゆっくりとスロープを、手すりを持って下りる。

綾波が下車したのを確認すると、運転手はドアを閉めてバスを発車させた。

外は、 かなり激しく雨が降っていた。

バス停には屋根がついていて、雨宿りは出来そうだったけど。

それでも、暗い空は気分がいいものではなかった。

「……どうしよう」

このまま一つの傘で家まで歩けば、びしょびしょになってしまう。

家までは五百メートルほどで、全力で走ればどうにかなるかも知れなかったけど。

ベンチに腰掛けている綾波を見て、僕も隣に座る。

「どうする?」

荷物を足元に置き、ふっと綾波の方を見たら。

雨の様子を確かめるように、空を見上げて。

「……待ちましょう」

「え?」

「……雨が止むのを、待ちましょう」

そう、手に持った荷物を抱きしめるようにしながら言った。

僕は、それを、ただ単純に荷物が濡れるのが嫌なんだ、と解釈して。

「……そうだね。そうしよっか」

雨が跳ね返っている道路を、ぼーっと見つめた。





何もすることなく、雨が弱くなるのを待つ。

けどやっぱりそれだけじゃ間が持たなかったので、その間に、表向きは暇をつぶすという意味で、綾波としりとりをやってみた。

これが、かなり強かった。

綾波は僕が知らないような単語ばかり連発してきて、四回やったけど全敗。

意外な一面を垣間見たような気がした。

「……あ、止みそうだね」

雲の隙間から、沈みかかっている夕日が見えてきた。

夕暮れは雨の街を赤く映し出した。

「でも、まだ少し降ってる」

手を出して、水滴が飛び散るのを確認して言う綾波。

「まあ、傘差せば大丈夫だよ。行こう」

荷物を持って、立ち上がる二人。

傘を広げる。

折り畳み傘の面積は相当狭く、かなり近寄らないと二人は入れない。

けど、僕は躊躇してしまった。

「……どうしたの?」

綾波が不思議そうな目で見てくる。

「いや、近いの、嫌じゃないかなって思って……」

異性と一つの傘、というシチュエーションだけでも僕にとってはかなりやばい。

僕は、綾波から離れるように傘から肩を出した。

制服の中に、雨が染み込んでくるのを感じた。

それを見た、綾波は。

「肩が、濡れるわ」

そう言って傘と共に僕へ近づく。

「あ、綾波?」

体が密着するのを気にする様子はない。

綾波が気にしなくても、僕が気にするのだが。

綾波は、何故か僕と目を合わせようとはしない。

その瞳は家までの道を写していた。

「……それに」

それは、雨の音でかき消されそうなくらい、小さな呟きだった。

そして、気のせいかも知れないけど、少し頬を赤くして。





「……別に、嫌じゃないから」
















翌朝。

空には、きれいな虹がかかっていた。












+続く+






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