紅き瞳は何を写す
第七話 少年達の関係 




ガラッ・・・

シンジが目の前で交わされる凄まじい会話をボーっと見ていると
教室の入り口が開けられ、一人のジャージ姿の男子が入ってきた。
「トウジ・・・」
眼鏡の男子が呟きトウジの下へ走っていった。
「トウジ、もういいのか?」
「ああ、見ての通り、ばっちりや!!」
すると、男子達がトウジの所に集まり始め、いつの間にか取り囲まれていた。
ふと、シンジが女子達の会話が止まっていることに気づき目線を向けると、
レイはわずかに嫌悪感を混じらせて、ヒカリは嬉しそうに少しばかり頬を染めながらトウジを見ていた。
しかし、シンジには表情から感情を読み取る事が出来ず、トウジに視線を向けているレイを見て、少しムッとしていた。

トウジはシンジとレイに気が付くと、笑顔を消し、真剣な顔をしてシンジ達の方へ歩み寄ってきた。

「碇・・・」
シンジは全ての感情を押し殺し、無表情でトウジに応えた。
「何・・・・」
次の瞬間、トウジはいきなり土下座をした。
「すまんかった!!お前達が帰った後、冷静になって後悔したんや、お前は必死にみんなを守ろうとしたんやろ?それがあの結果に繋がったのは仕様があらへん・・・お前が必死にたたかっとる間、ワイがやっとった事ゆうたら寝とっただけや、ワイ・・・ワイ情けなくてたまらんかった・・・」
と言うと、トウジは泣き出してしまった。
「・・・・鈴原」
「碇!!ワイを殴ってくれ!!!」
「・・・断る」
「頼む!!せやないとワイの気がすまへんねん」
「僕が殴れば君は罪を忘れる事ができるの・・・?」
「うっ・・・・できへん、せやったら、どないすればええねん!?」
「僕の・・・下僕になるんだ・・・」
シンジの言葉に様子を見ていた者全員が固まる。
「なんやと!?」
「聞こえなかった?僕の下僕、奴隷になれって言ったんだ」
「そんなんなってたまるか!!」
「君は罪を償わないと?」
「ハッ!!お前みたいな奴は殴られて当然じゃボケ!!」
「やっと、君らしくなったじゃないか・・・・」
「なんやと!?」
「『男が簡単に頭を下げるもんじゃない』君が常々言っていた言葉だよ、鈴原、『君と僕は水と油決して交わる事のない』これも君が言った言葉だ、自分の言葉に責任を持てよ・・・」
「・・・・・そうやったな、碇・・・」
二人の関係は正にライバル・・・
勉学ではシンジがトップ、運動ではトウジがトップ
片方は明るく外向的、片方は暗く内向的、片方は直情径行で、片方は冷静沈着
二人の同じところといえば、チルドレンである所と、互いにライバル心と嫌悪感を抱いているところだけである。
これに、何か付け足すならば二人とも根は優しいという所か・・・
「ワイらは、水と油やったな・・・」
トウジはそう呟き、シンジ達のところから離れていった。
「あの・・・!!」
レイは今の会話だけで二人の大まかな関係を察知した。
だが、同じチルドレン同士でいがみ合っているのはあまりに悲しい。
「・・・何?綾波・・・」
「なんや?」
クラス中が注目する・・・
「私が・・・石鹸水になれないかな?」
「「「「ハッ?」」」」
「あれ?・・・知らない?」
みんなは少女の発言の意味がわからず間抜けな声を出していた。
「・・・・・綾波、無理だよ・・・」
シンジのみがその意味を察し答えた。
「綾波さん、どういう意味でっか?」
トウジは意味が分からずレイに聞き返した。
そこにすかさずシンジの口撃が入る。
「頭が空っぽだから・・・」
「なんやと〜!!」
「碇君!!落ち着いて鈴原君、説明するから」
「うっ・・・」
「・・・・・」
トウジはレイのあまりに真っ直ぐな目に戸惑い、シンジはレイの叱咤に少し落ち込んだ。
「あのね・・・石鹸水を入れると、水と油は混ざり合うの・・・同じチルドレン同士でいがみ合うのって嫌じゃない?・・・だから、私達も・・・」

「綾波さん、無理な注文でっせ、そりゃ〜」
「そんな!!」
「言ったろ?僕らは水と油、僕は汚い油とは交わりたくないよ」
「なんやと〜!!何でワイが油でお前が水やねん!!」
「きれいな日本語も使えない君がなんで水なのさ?」
「これは関西弁ちゅうまともな日本語じゃい、ボケ!!」
「気づいていないなんて、おめでたい人だね君は、その関西弁はおかしいって言ってるんだよ僕は」
「じゃっかしいわい!!どたまぶち抜くぞぼけぇ!!」
「やれるもの、ならやってみなよ?もう一回病院に帰してあげるよ」
「・・・クスクスクス」

二人は控えめな笑い声に反応し、レイを見た。
「何がおかしいのさ?綾波」
少し不機嫌そうにシンジはレイに問いかけた。
「だって、碇君・・・とっても楽しそうだもの・・・そうね・・案外このままでいいのかもね?」
レイの言葉が理解できずシンジとトウジが同時に首を捻らせるというレアなシーンが見ることが出来た・・・


そして、その後レイはヒカリとサクラも同じ試みをして、同じ感想を持ったと聞いた。


その時、シンジ、トウジ、レイの携帯が同時に鳴り響いた。
「「「はい!!(綾波、碇、鈴原)です!!」」」
三人は顔を見合わせ、頷く
「すまん、委員長、先生に説明しとってくれ」
「あっ私のもお願いヒカリ」
「あっ・・うん・・」
「・・・・行こう、綾波」
慌てて、教室を飛び出して行く三人・・
「がんばれよ〜!!」
「死んだらしょうちしね〜ぞ!!」
「がんばれ〜綾波さ〜ん」
「トウジ〜」
後ろから聞こえる声援に笑みをこぼしながら、走る三人
校門前で待っている黒い車に乗り込み、NERVへと向かった。



シンジは不満顔であった・・・
それは、レイがやっと分かるぐらいではあるが・・・・
初号機はS2機関を取り入れたため調査中
零号機は調整中のため戦闘不能
よってフォースチルドレンによる単独戦闘
これが、ミサトから伝えられた決定事項であった。
まだ、これだけならシンジの機嫌もここまで悪くはならなかったであろうが、発令所から出て行くトウジから言われた
『まあ、命令やったらしょうがあらへんなぁ〜、ワイがちょちょいっと世界救ってくるさかい、碇は暴走せんとそこでおとなしく見とれ、あっはっはっはっ』
と高笑いをしながら、行ってしまった。
彼の僅かに震えた声は、緊張を必死で隠していた事が窺い知れた。
しかし、シンジはそんな事には全く気づかず、トウジの嫌味に腹を立てていた。
「碇君・・・私ね・・・少し安心しちゃった、碇君が危険なところに行かずにすんで、鈴原君が行くのに、少し喜んじゃった・・・酷いね、私・・」
「綾波・・・そんな事ないよ・・・僕を心配してくれたんだろう?それに僕なんて心の底から喜んでるよ・・」
レイは少しだけ微笑み
「ウソつき・・・」
(ホントは鈴原君の心配してるくせに・・・)
「・・・・」
ピンクフィールド発動中!!


一方、まさか自分の想い人がピンクフィールドを発動させ、戦闘に出ていないなど、想像もしていないサクラは用を足し、女子便所から出てきたところであった。
(あれ?・・・・)
シェルターの出入り口に向かう人影、
(あれ、相田君?)
サクラは『ミリタリーおたく』『メガネ』『カメラ』三つの単語で説明が出来る少年、相田ケンスケがシェルターの出入り口を開けようとしているのを発見した。
(うわ〜、どうしよう〜、止めないと・・・でも、相田君の事あまり知らないし・・・・)
などと考えていると、意外にもあっさりと開いた出口からケンスケが出て行く。
(うわ〜出て行っちゃった〜・・・止めなくっちゃ!!はっきり言って相田君はどうでもいいけど、碇君の邪魔になったら嫌だし・・・)

サクラはケンスケの後を追っていった。この時の決断が彼女の未来を大きく変える事になる・・・

一方、その頃トウジは、
「なんやねん!!これ効かへんやないか!!」
パレットライフルをイカとエビを合体させたような怪物の鞭を避けながら毒づいていた
『トウジ君?ATフィールドを中和できる?』
「それは、あのけったいな化けもんに近づけいう事でっか?」
トウジは少し顔を強張らせ、聞き返した。
『ええ、そういうことになるわね・・・』
ミサトも申し訳なさそうに呟いた。
「了解、男、鈴原トウジやったりまっせ!!」
『ありがとうトウジ君・・・中和後、兵装ビルのミサイルを発射します、日向君、準備して!!』
「はい!!」
(見とれ、シンジ・・・)
トウジはシンジの昔の呼び方を思いだし、心の中で無意識に呟く。
と一瞬気を抜いたせいで、使徒に足を掴まれてしまった、
「まずっ・・・」
トウジの乗る参号機は山へ向かって吹き飛ばされた・・・
(やっぱ見んな・・・・)

どおぉぉぉん
山の斜面にそって寝そべる形になっている参号機
(くっ、このイカが〜)
ふと視線の端に何かが写った気がして左手付近を見てみると其処には寝そべっている親友
「け・・・ケンスケ?」
彼は上から落ちてくるEVAの手の風圧によって飛ばされ倒れていた。
「どないしよ・・・」
『トウジ君のクラスメイト!?』
「こないな奴でも親友です!!」
次の瞬間、使徒の鞭が参号機を襲った。
トウジは避ける訳にもいかず手で受け止める。
「くっ・・ううう・・・・ぐぅ・・・」
フィールドバックする手の痛みで思わず声を漏らす。


「相田君!!」
次の瞬間、クラスメイトの女子が飛び出し、ケンスケを引っ張っていた。
ケンスケはそのお陰で我に返り、その女子と共にシェルターに走っていった。
それを確認したトウジは立ち上がり、ATフィールドの中和に集中し始めた。
「ATフィールド中和しました!!」
『日向君!!お願い!!』
ミサトの指示により近くの兵装ビルからミサイルが飛んでいく
使徒の腕は吹き飛び、攻撃手段ガ全くなくなっていた。
『トウジ君!!止めを刺して!!』
「了解!!」
待ってましたとばかりに肩からプログナイフを取り出し、真っ直ぐコアに向かって走るトウジ
トウジの一撃により使徒は完全に沈黙した。



「相田君・・・大丈夫?」
サクラは、一緒に走ってきたケンスケに話しかける。
「あ・・・ああ助かったよ、愛咲」
ケンスケはサクラに礼を言った。
「あっ!!怪我してるじゃない!!」
ケンスケは、地面にこすり付けられたせいで腕を切っていた。
「え?ああ、これ位・・・」
「だめよ!!ちゃんと消毒しないと、ちょっと待ってて!!道具借りてくるから・・・」
「ああ・・・」
その後、ケンスケはサクラから丁寧に処置をしてもらった。
更にその後、NERVから呼び出しをくらいこってり絞られたが、ケンスケはあまり落ち込んではいなかった・・・・
そして、次の日からなぜかケンスケの写真売り場ではサクラの写真が並べられる事は無くなった・・・・




あとがき

どうも〜BARONです
やっと、シャムシェルが終わりました〜
疲れた〜
戦闘シーンを書くの苦手なのを自覚しました。
大変だよ、うん
これからは学校シーン大目戦闘少なめで行きたいと思います。
なにか、質問、感想、苦情、訂正等があれば送りください。あと友達になりたい人とかも大歓迎!!あんま、友達いないんで・・・(爆)
ええっと次回はラミエルかな・・・?
アスカを早く登場させて〜って言う人もメールしてください。



+続く+





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