紅き瞳は何を写す
第四話 見知らぬ天井




暖かい日が差し込む病室で、一人の少女が目を覚ました。
その姿は、透き通る程の白い肌、蒼銀の髪に紅い目と言う、特異な身体をしていた。
しかし、彼女の顔立ちはその特異な身体が気にならない程の美貌を誇っていた。
「知らない天井だ・・・」
少女はポツリと呟いた。
「でも・・・ある意味見慣れた天井ね・・・」
(碇・・く・ん・・か・・・)

レイはエヴァンゲリオンの中で出会った、自分に瓜二つの少女とあまりに繊細な心を持つ少年を思い出していた。
(でも、あのヒトは誰で、あの記憶はなんだったんだろう・・・?)
(あの時は、なぜか分かってたような気になってたんだけどなぁ〜・・・)
(それに、あの記憶の中の碇君と、私が出会った碇君なんか、違うきがするのよね〜・・・う〜ん・・・)
(まっ・・なんにしろ顔はいいし、寂しがり屋で母性本能をくすぐる所が・・・・)

『東洋の三賢者』とまで呼ばれるほど聡明な母を持っていたレイは、
しっかりと受け継いだその天才的な頭脳をフル回転させていた。

(多分、あれは夢の中の非常識な世界でも納得してしまうのと変わらない感覚と思う・・・)
(しかし、あの記憶、夢と片付けるにはリアルすぎる・・・)
(そして、あのヒトの能力、明らかに零号機から初号機の中に移ったという事であろう・・・)
(なら、テレポーテーション?それとも幽体離脱?魂だけだったのか?それとも身体ごとだったのか?)
(なんにしても、只者じゃない・・・ん!!あれ、そう言えば彼女は零号機の中に居た・・・)
(じゃあ、あれは零号機・・・?ならあのロボットは、ロボットではなく人工人格の入れられたアンドロイド?)
(それに、私だけど、私じゃないとも言っていた。もしかすると私をモデルに作られた人工人格?だから私が適格者?)
(でも、そうなると、世界で五人と言うのは少なすぎる・・・)
(そういえば・・・シンクロ率とか言っていた・・・シンクロ?何と?エヴァと?)
(だとするとエヴァに人格が入っているのは確実・・・)
(でも、人工人格じゃないとすると・・・・)

そこまで考えた時、ドアがノックされているのに気が付いた。
「はい、どうぞ」
と答えると、ドアが開かれてそこにはミサトが立っていた。
「大丈夫?レイちゃん」
「はい、とりあえずは・・・」
「そう、お医者さんが言うには、本人が大丈夫って言うなら退院していいって・・・どうする?」
「はい、出ます」
「そう、あっ・・・これ制服、クリーニングしといたわ」
自分が裸だった事に気が付いて、慌ててシーツで身体を隠しながらお礼を言った
「あっ・・・ありがとうございます」
「いいのよん♪」
「あの・・・」
「ん?・・・何?」
「何が起こったのか、教えてくれませんか?」
「ああ〜うん、話してもいいんだけど・・・詳しい事はリツコが司令と会うときに話してくれるっていうから・・・
その時にね?」
「はい、わかりました、お父さんとはいつ会えるんですか?」
「ちょ〜ち、待っててね・・・」
ミサトがケータイを取り出し、電話をかけようとしたのを、レイが慌てて止めた。
「ミサトさん、何しようとしてるんですか!?」
「えっ?・・・何って司令の予定を確認しようと・・・」
「ここは、病院ですよ!!」
「そんな固い事言わないの・・・大丈夫よ〜ちょ〜っとなんだから〜」
「じゃあミサトさんは、ペースメーカーの人が亡くなったら、なんて言い訳するつもりですか?『ちょっとの間かけるだけだったから大丈夫だと思った』って言うつもりですか?」
「うぐっ・・・!!」
「ミサトさんは、大切な人が殺されて、そんな事言われて納得できるんですか?」
「う・・・そっそれは・・・でっでもレイちゃんが・・・」
「責任転嫁ですか?『私は電話をかけて確かめて』と言いましたか?知らないなら知らないでいいじゃないですか」
「うう・・・そっそりは、そうだけど・・・」
「はぁ〜」
「さっ・・さあとりあえず、Nervへ行きましょう」
(この人大丈夫かなぁ〜)と改めて思うレイであった・・・


昼間だと言うのに暗く広い部屋の中、ポツンと有った机と椅子にNerv総司令の綾波ゲンドウが座っていた。
その横には白髪の老人、冬月コウゾウが立っていた。
「綾波・・・レイ君はいつ来るんだ」
「知らん」
「呼んだらどうだ?」
「問題ない」
「よし、じゃあ呼ぶぞ」
「ああ」
そう言うと、冬月は机の上に置いてあった電話の受話器を取った
「ああ、私だ、サードチルドレンを呼んでくれ・・・ああ頼むよ」
用件を言い終わって、冬月は受話器を置いた。
「呼んだぞ」
「ああ、シナリオ通りだ」
(こいつは、何を言ってるんだ・・・)

「冬月、赤木博士も呼んでくれ」
「なに?何故だ?」
「・・・・・」
「ふぅ〜・・・分かったよ」
「ああ、頼む」
「ああ・・・赤木君かね?・・・司令室まで来てもらえんかね・・・・・ああ、ありがとう待っているよ」


約20分後・・・・


ゲンドウ、冬月、の二人にリツコを加えた三人が居る司令室にノックの音が響き渡る
「葛城1尉です、サードチルドレンを連れてきました」
「ああ、入ってくれ」
ドアが開かれると、ミサトとレイの二人が入ってきた。
「お父さん・・・色々聞きたい事があります」
「ああ、問題ない」
「まあ、レイ君、ひとまず座って話そうじゃないか」
「ああ、はい」
レイは、三人の座っているソファーに腰掛けた。
「ああ、葛城君、席を外してくれたまえ」
「え!!ああ、はい、了解しました」
不承不承と言うような様子でトボトボとミサトは出て行った。
「さて、何から聞きたいのかね?」
「はい、まずあのエヴァンゲリオンの事についてです」
「何かしら?」
と科学者としての興味を持ったリツコはレイに訊いた。
「ええ、あのロボットは、ロボットなんかじゃなく、人造人間じゃないかな・・・と」
機密事項でないにしろ、誰からも言われずに気が付いたレイに対し三人は驚いていた。
しかし、三人は驚きを顔には出さず、リツコがまた、尋ねた。
「はい、あの・・・これから私が気付いた点を言いますから、最後まで止めないでいただけますか?」
三人は頷き、肯定した。
「まず、あの謎の生命体『使徒』と呼ばれていた、ものについいてですが、おかしいんですよ。
なぜ、『使徒』は此処に現れたのか?世界で4人しか対抗できる者がいないのに、なぜ本部の此処に?
偶然にしては運が悪すぎる。それにあの大きさ、丁度エヴァンゲリオンと同じ程度の大きさだった。これも偶然か?
答えは『否』私が推測すると、エヴァンゲリオンは使徒のコピー」
その答えに、流石の三人も驚きを隠せなかった。
「恐らく、何らかの形で、そうですねぇ大体10年前位に『使徒』を発見し、それと同時に予定表のような物も発見
更に、あの『使徒』を引き寄せる餌も発見した。そして、その餌を日本の地下に埋め、使徒対策組織の本部が此処に作られた、そして予定表に間に合わせる為、『毒を持って毒を制す』ということわざがあるように、使徒を元にエヴァンゲリオンが作られた、でも、一つだけ分からない事があるんです」
「な・・・なにかね?」
「適正者、チルドレンの事です。私は長い事病院に入院していましたが、特別変わった検査をやった覚えはありません。
ですから、なぜ、私がチルドレンだと分かったのか?です」
「そ・・・それについては、機密事項だ、悪いが教えるわけにはいかないよ」
「そうですか」
「きっ君はいったい・・・」
「冬月先生、私は、『東洋の三賢者』と呼ばれた者の娘です」
レイはニッコリと笑っていた。
その表情に冬月とゲンドウは十年前に亡くした女性の面影を見たのだった。
「私のエヴァンゲリオンについての話は終わりです。あの・・・私が気を失った後何が起こったのか教えてくれませんか?」
「それについては私が説明するわ」
「貴女は、零号機とのシンクロ率が400%を超え肉体がエヴァに取り込まれました。
しかしその直後、エヴァ2体は活動を停止、その後回収され、約2時間後にシンクロ率の低下と共にファーストチルドレン、サードチルドレンの肉体再生、その後両者共に病院に移動、以上よ」
「ありがとうございます」
「こちらが、貴女に何があったのか訊きたいのだけど、あとでいいかしら?」
「はい、わかりました」
「一応君達には給与が与えられる、まあ詳細はこっちを読んでくれたまえ」
冬月は分厚い書類をレイに渡した。
「あっ・・・あの〜私いつ、契約したんでしょう?」
「「えっ!?」」
「いや、君は零号機に乗ったでわないか」
「あれは、ミサトさんに無理やり・・・」
「なんだって?」
「じゃあ、契約してくれないのかね?」
「いえ、いいですけど、一つだけ条件があります」
「何かね?」
「父さん、碇君を捨てないであげて」
「何の事だ」
「エヴァの中で、碇君に会ったの、彼、私が来たから『自分は用済みだから捨てられる』って言ってた」
「そんな事はしない」
「ホントに!?」
「無論だ」
「レイ君、君かシンジかは分からんが、勘違いしとるよ、ゲンドウは君と同じくらいにシンジを可愛がっておるよ」
「えっ!!そうなんですか」
「ゲンドウは不器用だからな、もしかしたら愛情が伝わっていないのかもしれないな」
「問題ない、修正範囲内だ」
「どうするの?お父さん」
「同居すればいい」
「えっ?じゃ・・・じゃあ私は?」
「同居すればいい」
「じゃあ私、碇君とも同居するの?」
「嫌か?」
「ええ、いっ嫌じゃないけどさぁ・・・」
(レイちゃん妄想展開中・・・)
「フッ・・・ならば問題ない」
(ゲンドウ妄想展開中・・・)
「えへへへへへへ・・・・・・・」
「フフフフフフフ・・・・・・・」
冬月は一言漏らした。
「親子だな・・・」




あとがき

ああああ・・・すいません
サードチルドレンの話書けませんでした。
でも、このシーンはもう終わりだから、もう話せないのでいつか機会があったらと言うことで・・・
すいません、次回は多分トウジに殴られるシーンだと思います。いけたらいいなw
ええっとシャムシェルは確実に無理です。
かなり飛ばせば行けない事も無いですがね・・・・
ゲンドウとレイの同居は結構賛成派が多かったので当初の予定通りでいきました。
ゲンドウとシンジのレイを巡る戦いも予定しております。(いつか)
では、またご愛読のほうよろしくお願いします。



+続く+





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