紅き瞳は何を写す
第二話 魂の咆哮



「これもお父さんの仕事ですか?」
「そうだ」
彼女の頭上から質問の答えが返ってきた。
「お父さん!!」
レイは、自分の父・碇ゲンドウがいる方向へと、首を振り向いた。
そこは、エヴァンゲリオンの頭上にガラスが張られており、部屋になっているようだ。
ゲンドウは赤いサングラスを掛け、暑苦しい顎鬚をして、まわりに圧迫感を与えていた。
「三年ぶりだな、レイ」
レイは怪訝そうな顔をしながら、首を縦に振った。
「どうした?レイ」
レイは少し言いにくそうに、
「そのサングラスと顎鬚どうしたの?」
そう言うと、ゲンドウが得意そうに
「ああ、これは冬月の奴がな、娘は流行に敏感だと言うもんだからな」
「サングラスに顎鬚なんて流行ってないよ?」
レイのその言葉にゲンドウは驚愕に顔を歪めた。
次の瞬間、ゲンドウは横にあった電話の受話器を取り
「冬月、どう言うことだ!お前のせいでレイに嫌われたらどうする!!・・・ええい、うるさいさっさと来い!!」
その様子を見ながらクスクスとレイは笑っていた。
そしてリツコとミサトを思わず硬直させる一言を放つ。
「お父さんったらカワイイ〜」
「「なっ!!」」
((あの司令をカワイイなんて・・・この娘、何者?))
ゲンドウは、自分の取った行動に気づきミサトや、リツコの前である事を思い出し、冷や汗を掻きながらこう言った。
「・・・問題ない」
「お父さん」
「ん?何だレイ」
「何か用事があって呼んだんじゃないの?」
レイの至極まともな質問に、ミサトとリツコの二人は、時間がない事を思い出し話を修正しようとする。
「その質問には私が答えるわ」とリツコが言ってきた。
「リツコさん」
「単刀直入に言うわ、貴女にこのエヴァンゲリオンに乗って欲しいのよ」
「えっ!!私がこのロボットに乗ってあの化け物と戦うんですか?」
「ええ、そうよ」
「なんで私なんですか?」
「これを操縦する為には10歳〜17歳の間の子供で、しかもある『資格』を持つ者じゃないといけないの
その『資格』を持っているのは現在確認されているのは、貴女を含めて5人。お願いできないかしら?」
「そんな・・・でも・・・私・・・ロボットの操縦なんてやった事ないし」
「大丈夫、プラグスーツと言うものを着て、操縦席に座って考えたとおりに動いてくれるわ」
「へ?・・・・・・でも・・・・」
レイは逃れる為の言い訳を探すが、見つからない
「それにエヴァンゲリオンじゃないと、使徒には対抗できないのよ」
困惑し、目に涙を浮かべているレイにリツコが追い討ちをかける。
「それに使徒を倒せないと、人類は・・・いえ、世界中の生物が死滅するの・・・」
「そんな・・・信じられない・・・」
「貴女も見たでしょう?・・・使徒を・・・」
「じゃあ今からいきなり戦えって言うんですか!?」
「いいえ、今回の使徒は既にシンジ君、ファーストチルドレンが倒せると思うわ」
「今回はって・・・まだあんなのが来るんですか?」
「ええ、恐らくね」
「恐らくって・・・」
「そう・・・いつ来るか、あと何回来るのかも不明なのよ」
「そんなの・・・・地震に毎日怯えて暮らすのと何も変わらないじゃないですか!!」
「でも・・・対策を立てて置かないと、『間に合いませんでした、地球の皆さんさようなら』と言う訳には行かないのよ?」
「でも・・・」
レイが反論しようとしたその時、リツコの携帯電話が鳴り出した。
「なに、マヤ?今忙しいのよ、・・・なんですって!?・・・分かったわ・・・武装ビルは?・・・・そう・・・ええ、何とかするわ」
レイはリツコの慌てようから、『男の子の乗っていた紫のロボットは負けちゃったのかな?』などと呑気に考えていた。
なぜなら、この時はまだ『自分以外の人が三人はいるのだから少なくとも自分が出る事になる事はない』と思っていたのだ。だが、彼女はその時点ではまだ自分の考えの矛盾点に気が付いていなかった。
『なぜ他の人も居るなら一人しか出撃していなかったのか・・・・・・』と・・・・
「ミサト、大変よ」
「何!?シンジ君が負けちゃったの!?」
「いいえ、ある意味それより酷いわ・・・・・」
「何よそれ!?」
「初号機が暴走したわ、目標を撃破後、捕食、S2機関を取り入れ、こちらからのアクセスを全くの無視、武装ビルは使徒との戦闘によって破壊されていて、捕獲どころか、破壊も出来ないそうよ、しかもシンジ君を取り込んで・・・」
「何ですって!?・・・どうしましょう・・・」
ミサトは悔しそうに親指の爪を噛みながら呟いた。そしてチラッと目線を上げると話が判らないので、父・ゲンドウと世間話をしているレイを見付けた。
そして、その瞬間リツコはミサトの頭の上で裸電球が光っているような気がした。
「そーよ、リツコ、エヴァはエヴァで止めれば良いのよ!!」
得意そうに言うミサトに対し、リツコは『何をあたりまえの事を・・・』と言うような目を向けていた。
「あのねぇ、シンジ君を除く3人の内、セカンドはドイツ、フォースは事故で絶対安静、フィフスもセカンドと共にドイツ、この状況でどうするって言うのよ?」
「あら、まだ一人残っているじゃない?」
「えっ!!まさか、貴女・・・」
「そう、そのまさかよ・・・レイちゃん!?」
「・・・・はっはい!!」
いきなり声を掛けられたレイは慌てて答えた。
「今すぐエヴァに乗ってもらえないかしら・・・?」





少し時を戻そう・・・・・
『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・』
「サード、シンクロ率上昇!!自我境界点を突破します!!」
この後リツコに電話を入れる事となる童顔の女性、マヤが叫ぶ
「くっ・・・シンジ、あれほど無茶はするなと言っておいたのに・・・」
白髪の老人は悔しそうに画面のシンジのプラグスーツが、持ち主を失って液体の中を漂っているのを見ていた。
『ウオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォ・・・・・・・・・』
人とは思えぬ声で、初号機が吼えていた。
次の瞬間、初号機は自分の頭を持ち上げている、相手を敵と見なしたのであろう、いきなり使徒の腕を掴み、握力のみで引きちぎり、使徒の左手を食べ始めた。
一方使徒は、自分の腕についている武器、『光のパイル』で攻撃しようとした、しかし使徒の腕から伸びる発光体は、初号機の目の前で止まってしまった。
突如現れた、オレンジに輝く八角形の壁にその進行を止められてしまった。しかし、使徒はこの壁の正体は分かっていた、
自分も持っているのだから当然だ、『ATフィールド』そう呼んで居る者もいる。
左腕を食べ終えたのか、顔を使途の方へ向け、立ち上がりいきなり使徒を押し倒した。
そして、初号機は食事を続け、S2機関と呼ばれる、永遠のエネルギー源を手に入れた。
「何てこと・・・・」
発令所の者たちの中で声にする事が出来たのは、ただ一人のこの一言だけだった





「えっ?」
「だーかーらー、エヴァに乗ってもらいたいのよ」
リツコが口を挟んできた。
「ちょっと待ちなさい、ミサト!!エヴァを出してどうするって言うのよ!?」
「だから、レイちゃんに抑えて貰って・・・」
「今日初めて乗るのにそんなことできる訳ないでしょ!?起動するかどうかすら分からないのよ!?」
「えっ?だってシンジ君は・・・」
「シンジ君が、異常なのよ!!」
「えっ?そうなの?」
「それに、起動したとしても相手はシンクロ率400オーバーの動きをするのよ!?走る事すらままならないのにどうするって言うのよ?」
「うっ・・・」
ミサトは相手の正論に何も返せなくなってしまった。
「あの〜ちょっといいですか?」
「何?レイちゃん」
「この、エヴァでしたっけ?このエヴァをどうやって地上までだすんですか?」
そう、ここは地下何百メートルという深い所にあるのだ。
まともにこんな大きい物が出ようとすれば何時間でもかかるだろう。
「ちょっと待ってくれる?そういう話はまた後でするから・・・」
「答えてください」
「えっ?」
ミサトは、レイの予想外の強い意志に驚いた。
そして、代わりにリツコが答えた。
「射出口があって、そこから電気の力を使って地上まで押し上げるのよ」
「やっぱり・・・そうですか・・・じゃあもう1つ、このエヴァを使って動きを誘導できますか?」
「う〜ん、もしかしたら真っ直ぐ零号機に向かってくるかもしれないわ」
「そうですか・・・・」
とだけ言うと、レイはミサトの方へ歩いてゆくと何やらミサトに耳打ちをしていた。するとその後ミサトがニヤリと笑った。それをリツコが不思議に思い、近付こうとした瞬間ミサトが大声を上げた。
「リツコ!!作戦を思いついたわ、零号機で初号機を射出口の上まで誘導した瞬間、射出口を開いて初号機はまっ逆さまに落とすわよ」
リツコは開いた口が塞がらないと言った様子であった。当然であろう、誰が見ていても明らかにレイによって持たらされたアイディアを何の躊躇なく、自分が思いついたと言い放ったのだ。
「みっミサトさん!!」
レイもびっくりした様子でミサトに呼びかけた。
「それじゃあ、私がアイディアを出した意味がないじゃないですか!!」
「えっ!?」
「あれには、人が乗っているんでしょう?だから安全策を考えて欲しくてこっそり教えたのに、落ちてきて壊れてしまったら何にもならないじゃないですか!?」
「あっ・・・ちっ違うのよレイちゃん、今のは作戦のベースであって、そこらへんはこれから考えるのよ」
(絶対嘘だ!!)
とリツコは思ったが、これから彼女の部下になって貰いたいのでこれ以上信用を落してもらっては困るので黙っていた。
「あっ・・・なーんだ、そうですよねぇいくら何でもあれじゃあねぇ」
レイはミサトの額に流れる冷や汗に気づかず、謝っていた。
「ごめんなさい私ったら早とちりしちゃって、ハハハハハハハハハ・・・・・」
「いっ、いいのよ誰にだって間違いはあるもの、ハハハハハハハハ・・・・」
ケイジに二人の笑い声が響く・・・




あとがき

えっと・・・次回はシンジ君とレイちゃんの初顔合わせです。多分はい
親父が目立ってないですねぇ、何とかしたいです。あと親父はいい奴だったりします。
あと、レイちゃんとゲンドウを同居させるか否かアンケートを取りたいです。メールで送って下さい。
もしくはシンジ君も入れて三人とか、シンジ君とレイちゃんの同棲、とか意見があったら送って下さい。
お願いします。



+続く+





◆BARONさんへの感想・メッセージはこちらのページから◆


■BACK